アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
君の話を聴こうか、[高3]にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
君の話を聴こうか、[高3]
-
「楓、おはよう。」
兄ちゃんは早起きだ。専門学校生になった今も変わらず、中学生の時とほぼ同じ時間に起きる。
僕は高3に進級した。新学期も始まり、去年から引き続き紅葉とは同じクラス…というのも、2年から学力別のクラス編成だからだ。
「おはよう、兄ちゃん。」
もうキスはしない。先月の卒業式からやってない。兄ちゃんは不思議そうだったけど、既に順応してる。
着替えを終えてる兄ちゃんは、いつものように洗面台の前を僕に譲って後ろでのんびり髪をとく。サラサラの髪は艶があり綺麗だ。
「兄ちゃん、久し振りにそれやりたい。」
「んー?」
櫛を手から取り梳いた。染めた事のない黒髪は、傷みも無くスルリと僕の指先を滑る。
いつだっけ、この行為を止めたの。…あ、そうだ。兄ちゃんの高校受験が迫って、朝も勉強するからって、起きる時間が合わなくなったからだった。
「綺麗だね。」
「楓の髪も綺麗だぞ。少し茶色がかってて、日に透けるとキラキラするんだ。羨ましいなって思ってた。」
びっくりした。羨ましいなんて…そんな事、今まで1度も言わなかったのに。
「紅葉のも一緒でさ、2人が陽の下を歩くの見るの好きなんだ。キラキラ、キラキラって、」
「それは、…凄く、嬉しいっていうか、」
何か恥ずかしい。もしかしたら兄ちゃんは、ずっとこんなふうに感じた事を素直に言いたかったのかもしれない。
でも今までの僕達は気持ちや身体を支配したり、狼の存在に気を取られたり、加賀との仲を腹立たしく思ってたりと、兄ちゃんの言葉をきちんと聞こうとしなかった。あの頃に、もしこれと同じセリフを言われたら、僕らを恋愛感情として好きだって、きっと勘違いしてただろう。それで、言えなかったのかもしれない。
「うん。オレも2人が料理を褒めてくれたりすると、凄く嬉しいんだ。だから、言えて良かった。」
「…そっか、有難う。」
兄ちゃんが、晴れ晴れとした笑顔で頷く。もう、キスをしたいとは思わない。この笑顔を守るのは加賀の役目だ。僕は、こうやって家族の絆を深める事を優先する。
「兄ちゃん、楓、おはよう。」
紅葉が来た。洗面台の前で話し込んでる僕らを見て、
「如何したの、二人共すっごい嬉しそうだね。」
「ああ。兄ちゃんがさ、僕達の髪の毛を陽の下で見るのが好きなんだって。」
「うん。少し茶色がかってるだろ、それがキラキラって光るんだ。すごい綺麗なんだぜ。ずっと羨ましいなって思ってたんだ。」
紅葉がちょっとびっくりして、それから微笑んだ。優しい表情。でも、恋慕は含んでいない。
「何か、恥ずかしい…けど、有難う。兄ちゃん。」
ああ、やっぱり紅葉も同じ事を考えてる。目を合わせる、うんって頷く。僕達は、歪めてしまった兄弟の関係をやり直す為に、少しづつ前進出来てるかな。
反省してる。
僕もだよ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
208 / 235