アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
君の話を聴こうか、[バイト]にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
君の話を聴こうか、[バイト]
-
「あれ、兄ちゃんバイトするの?」
兄ちゃんはリビングのソファーに座って、求人雑誌のアルバイトコーナーを見ながら、ペンで丸付けしてる。
「うん。ゴールデンウィークに京平と旅行に行くから、それまでになるべくお金を貯めようと思って。」
へえ、旅行にね。まあそうだよな、2人は付き合ってるし、そりゃ連休にはそうなるよな。
「バイトか…、僕もやろうかな。」
考えてみれば、僕は一度もバイト経験が無い。高1の時は真琴の周りの狼を追い払うのに忙しく、去年は生徒会で忙しかった。
「でも、楓は受験が……、」
「大丈夫、慌てて勉強しなくても今まで散々やってるから。」
実際、テスト勉強もした事無いけど、いつも紅葉と元生徒会長と僕の三人で上位争いしてるし。既に高3のカリキュラムは高1で終えていて、今は受験対策の授業を受けている。
「そっかあ、そうだよなぁ。きっと今受験しても合格だ。スゴイなあ楓。」
「そんな事はないけど。兄ちゃんはどんなバイトをするの?」
確か、以前はレストランのホールスタッフしてたな、今度はどんなバイトするつもりだろ。
「うんと、深夜の土木作業員。」
「は?」
「日払いで、時給が高いんだ!」
「いや、いや…それは止めよう。兄ちゃん細いし、保育士の勉強大変でしょ。あれは体力勝負だよ、そんなに筋力無いのに駄目だって。怪我するよ。」
兄ちゃんは力瘤を作って、長袖のシャツの上から撫でた…はぁって残念そうな溜め息。
「……うん、ムリっぽい。」
じゃあどうするかと、また雑誌をめくり始める。僕も隣りに座って一緒に眺めた。
「これにしようかな、カフェのスタッフ。うちの学校から近いし、軽い調理補助の仕事もあるってなんか楽しそうだ。割と時給もいいし、」
「なら僕も。」
一緒のバイトなら、何かあっても守ってやれるし良いかもな。
「じゃあ、一緒に面接受けような。今から電話してみる、」
「うん。」
渉と出掛けていて夕方に帰って来た紅葉へ、カフェのアルバイトの話をした。実は、連絡したら面接は今日でもいいかと言われ、2人で日中に面接を受けてすんなり採用されたんだ。
「えっ!2人ともバイトするの。しかも同じところって…、今日の今日でもう決まるって何それ、」
「うーん、人手が足りないって言ってたなぁ。オレは出来るだけ早く働きたかったし、丁度いいけど。」
「それで、明日から兄ちゃんと一緒に働くんだ。兄ちゃんの学校がある駅の近くだし、うちからもそんな遠くないから、平日は学校終わって5時からの3時間。土日は午前からのシフトか午後からのシフトだって。だいたい週5日くらいかな。」
「ええー、ズルくない?2人だけで決めるとか、僕にも声掛けてくれても良いのに、」
紅葉もバイトをしたがるとは思わなかった。リビングのテーブルに置いていた求人雑誌を取り、折り曲げているページを開いた。
「まだ空きが有るかもしれないから、今から連絡して明日にでも面接を受けたら?ほら、これ電話番号。」
「うん、そうする。」
紅葉は、つけていたテレビのボリュームを下げて、早速スマホを取り出して電話を掛ける。兄ちゃんと僕は、コーヒーを淹れる為にソファーから立ち上がった。
「……え、…そうですか…はい。…いいえ、」
紅葉の声が沈んでる。スマホをタップする指先。僕達は3人分のコーヒーカップにインスタントコーヒーを入れてお湯を注ぐ。
「なあ。もしかして…、」
「うん。駄目っぽいね。」
紅葉が僕達の居るキッチンへ寄って来た。
「はぁ、駄目だった。もう募集人数埋まったって!」
「だよなぁ、割と時給が高いんだそこ。だからオレ達も直ぐに電話したんだ。ごめんな、紅葉。」
やっぱりバイト経験のある兄ちゃんはしっかりしている。僕1人で探すと、こうはいかなかったと思う。
「ううん。残念だけど今回は諦める。」
「他にいいバイトないか、僕も探すの手伝おうか、」
紅葉がうんと頷き、はっとした様に顔を上げた。
「いい事思いついた!楓と交代でバイトすればいいだろ。絶対、バレない!」
「はあ?いや、まあ…バレはしないだろうけど、」
「スゴイな、双子ってこんな事も出来るんだな!」
いや、兄ちゃん…。
「ね、便利だね。同じ顔って!」
「本当だなぁ。」
2人共、それはもう決定って感じになってんのか?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
209 / 235