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友人の恋(3)にしおりをはさみました!
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友人の恋(3)
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能戸め、カフェでは大した事じゃないんだけどって言ってたくせに。何でこうなる…。
「うーん、来春からかあ…。まだ就活これからだし、そういう事を考える余裕無いんだ。仮に就職出来たとしてもしばらくは実家に居る予定だから、ちょっと無理だ。ごめんな。」
俺の部屋で、隣に座った真琴が申し訳なさそうに言う。突如現れた予測してなかった方向からの話だとしても、実質的に俺が同棲を断られた感じになんのは納得いかん。
ここまでの流れを簡単に言うと、カフェに呼び出されていたのは俺だけではなく真琴もだった。あの店は真琴の通う専門学校の近くにある。だからこそ、あそこで待ち合わせたんだと納得し、俺の家に場所を変えた。さすがに真琴のバイト先では話せない内容だからだ。というのも能戸の話は、自分の物件探しをしていたらカップルにオススメの良いアパートを見つけたから、俺たちにどうかっていう表面的には善意な申し出な訳だが…。
「あれ、そうなんだ。てっきり就職したら加賀と住むんだと思ってた。」
「だって来年って、京平はまだ学生だろ。しかもK大は家から通えるんだし、わざわざ家を出なくてもいいだろ。」
至極もっとも。俺も頷く。でも、本音を言えば真琴が同棲の話に乗り気だったら、今すぐにでも家を出るつもりだった。まあ、能戸の企みに乗る形なのはしゃくだけど。
「そっか。残念だな、まことっちが近くに住んでくれたら心強かったんだけどな。」
嘘つけ。わざとらしいわ。何だよその、しおらしい表情。
「力になれなくてごめんな、」
しゅんとする真琴。
「ううん。こっちこそ、大変な時期にごめんね。」
能戸は腹の中の黒さなど悟らせない完璧な柔和さで、にっこりと優しく微笑んだ。
「京平も誘ってくれたのにごめんなぁ。」
「いや、ただそんな物件があるって参考程度の話だし。全然気にしなくていいからな。」
真琴の頭を撫でてやる。これっぽっちも、全くもって気にしなくていい。…いや、本当はちょっとへこんでるんで後で回復の手助け求む。
「あ、電話。」
真琴のスマホが着信を告げる。ちょっとごめんなと席を立った。部屋を出て、廊下で話してる気配。はあーっと、長い息が向かい側から吐かれた。
「何、あのやる気の無い誘い方。もっと全力で頑張ってもらわないと頼んだ意味ないだろ。加賀京平という男の手練手管、全てを用いて本気でやれよ。お前なら出来んだろーが。」
真琴が席を外した途端にこれだ。
「んな技術ねーよ。」
はあーっと、俺も長いため息を吐き付けてやった。
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