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兵藤医院3にしおりをはさみました!
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兵藤医院3
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もう夜も遅いし、車で送ってあげるという涼子さんの言葉に目を白黒させて戸惑う五條の背中を彼女は容赦なく叩いた。
「遠慮しなくていいのよっ」
「いでっ」
「あなた怪我人なんだから」
いつの間にか打ち解けたらしい涼子さんと五條に「そうしなさい」とおじさんは微笑む。
そうっと鞄を背負った五條はこちらを向いて勢いよく頭を下げた。
「ありがとうございました」
思ってもみなかった行動に一同は驚いて言葉を無くす。が、いち早く反応した叔父さんはすぐに手をヒラヒラと振った。
「いいのいいの、お大事にね」
「ありがとうございます、おばさんも」
誰がおばさんよ!っと笑いながらまた背中を叩く涼子さんを「間違ってないでしょ」と軽くあしらいながら五條は一歩進んで俺に向き直った。そして口端に貼ったガーゼと一緒に痛そうに頬を引きつらせて笑った。
「また明日な」
その言葉がじんと心と体に響いて、思わず自分の表情が情けなく緩んだ。ああ、と返事をすれば、五條は叔母さんに連れられるまま診察室を出た。
その様子を見送ると、隣にいた叔父さんがぽん、と俺の肩に手を乗せる。
「いい子じゃないの、ねえ」
ふにゃりと綻んだ表情にこちらもつられて微笑んでしまう。
肯定すれば満足そうに頷き返してきて、笑顔を崩さないまま扉の方を向いた。
「それにしても、弱くなったとか力が無くなったとか、これから大変だろうね」
「うん」
「また明日って、学校行くの?一日ぐらい休んだらいいのに」
「…でもあいつ行くつもりですよ」
「本当に元気な子だなぁ。だったら直人くんも早くご飯食べて寝ないとねぇ。一人で戻れるかい?」
この診療所と俺がお世話になっている住居は隣接していて、院内の廊下を辿って行けば繋がっている作りだ。大丈夫です、と答えたら叔父が意地の悪い笑みを見せた。そして意味も無く俺の背を撫でる。
「昔みたいに抱っこして連れてってもいいんだよ」
「やめてくれっ」
恥ずかしさに頬に熱が集まるのを感じながら一生懸命首を振る。未だに子ども扱いしてくるこの人の癖は何とかならないものか。いくら冗談とは言え、本当にやりかねない人だ。
俺の反応を楽しそうに観察していた叔父は独り言を呟く。
「そうだよねぇ、直人くんも大きくなったもんねえ。甘えてくれないよねぇ」
その言葉を背に受けながら痛む額を指先で押えて深くため息をつく事しかできなかった。
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