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ケーキバイキング2にしおりをはさみました!
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ケーキバイキング2
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店内は甘い匂いがふわりと香り、コーナーには色々な種類のスイーツが彩りよくずらりと並べられている。ケーキだけではなく、多少のパンやスープ類も見かけるが圧倒的にケーキが多い。これは見てるだけで胸やけしそうだ…。
茴香さんや実桜ちゃんは「たくさん食べるわよぉ~」と張り切っているので、やはり女の子にとっては食べきれないほどのスイーツは嬉しいものなんだろう。
店は昼前だというのにやはり、カップルを中心に混んでいる。ボーイに案内された席を確保すると、五條姉妹は早速ケーキを取りに行った。あまりお腹の空いていない俺と中島は荷物番をしてその場待機。
丁度良く二人になる機会ができたので、今日きた本来の目的を果たす為、隣に座る中島に切り出した。
「中島…」
「ん?」
「…五條のことなんだが」
気になっていた五條の隠蔽事情を少しずつかいつまんで説明した。段々と表情が険しくなっていくが、我慢して聞いてくれた。話し終えると椅子の背凭れへ体を預けた中島は天井を見上げながら酷く面倒だという声音で言う。
「あのねェ…俺はアイツが嫌いなんだから、わざわざ自分の手を煩わせてアイツを守るみてェなことしねぇよ」
その様子は決して嘘を付いているようには見えない。この男には会う度にからかわれはするが今の答えはニュアンス的にも直感的にも嘘ではないと判断できた。
「アイツは自分が力を失くしたことをできるだけ周りから隠そうとしてる。その隠蔽した犯人も五條と同じ考えだからわざわざ隠すようなことをしたんだ…だったら、五條にとっても都合がいい。今のトコ、公にはバレてねーんだから。俺だったらアイツに都合が良くなることはしねェ」
「…俺の周りで、不良達の口止めができる人物はお前しか知らなかったから……」
顔をこちらへ向けた中島は言い聞かせるように唇を開く。
「あのな、犯人が隠蔽する際に何で喧嘩自体を無かったことにしなかったのか、五條の存在だけを隠したのか?明らかに喧嘩ごと潰した方が手っ取り早いじゃねーか。口止めする不良達に『今回の喧嘩を無かったことにしろ』って言うのと『五條の存在を無くして兵藤だけ言いふらせ』って脅すんじゃ明らかに後者の方がややこしいだろ。
犯人は面倒な後者を選んで公に直人くんの名前を出し、教師の口から喧嘩には出るなと言ってもらうのが目的。
そうすれば真面目な直人君は二度と喧嘩をしなくなる。真面目な直人くんは喧嘩の元になる五條には近付かなくなる。犯人はそれが狙いだった…そう考えるのが妥当じゃない?ま、実際は違ったんだろーけどなァ」
俺が考えつかなかった真相がつらつらと出てきた事におもわず絶句する。さすが、いくら不良でも清風凛に通っているだけあって理解も頭の回転も速い。余計な所で感心していたら考えていたことがバレたのか「もしかして馬鹿にしてる?」と呆れ顔で尋ねられたので全力で首を振った。
「犯人の思い通りにならなかった以上、危なくなったんじゃねェか。狙われてんのは五條じゃなくて、お前…直人くんだよ」
キッパリと放たれた言葉に実感が湧かない。狙われているのが、俺…だと?
「犯人はお前が五條に関わるのをよろしく思ってないってこと。アイツも直人くんに懐いてるから行き成りスッパリ縁を切れっていうのは難しいかもしんねーけど…五條に関わんない方がいいよ。この点は俺も犯人と同感。直人くん危ねぇぞー。犯人や不良達に狙われまくり」
「…そんな、」
五條の傍にいるべきか離れるべきか随分悩んでいるけど、本音を言えば傍にいたい…これからも。けれど危険を顧みない程馬鹿じゃない。五條に関わらない且つ喧嘩に交らない以外の方法で何か解決策は無いのだろうか…。戸惑う俺に少しだけ距離を縮めた中島は顔を覗き込んでくる。
「もーアイツから離れて俺にしときなよ。俺だったらアイツみたいに面倒かけないし100パーセント守ってあげれるけど?」
「…そういう問題じゃない……」
薄ら微笑を浮かべた中島の申し出を丁重に断っていたら、お皿を両手に持った茴香さん達が戻ってきた。「アンタ達も取りにいきなさいよぉー」と声を掛けられ、気乗りのしない俺を中島が腕を引いて立ち上がらせた。渋々ケーキの並ぶコーナーに行く。数歩踏み出した時、彼は俺の耳元で低く囁いた。
「五條に深入りしないほうがいいよ」
「あーもー駄目、何も入んなぁい」
「実桜もー…お腹一杯…」
くったりした二人は苦しそうに息を吐く。よくもまあ細い体にあんなにたくさんのケーキが入ったものだと驚嘆した。実桜ちゃんは皿に残った二個のケーキを見て僅かに顔を歪める。
「あー、これどうしよう。食べきれなかったなぁ…」
もうこれ以上入りきらないのだろう。手を動かす気力も無いらしい。憐れんだ俺は仕方なく皿をこちらへ寄せた。
「食べようか?」
「…いいの?ありがとー」
「じゃあ俺も一個ちょうだい」
中島と残ったティラミスとチーズムースをわける。その様子を見ていた茴香さんがふふふ、と怪しく笑った。
「こういうとき男の子がいると助かるわぁ~…」
「ほんとー、ケーキ食べてるとこも絵になるよぉー…写メっちゃお…」
ティラミスを一口食べた時点で向かいからピロリンと電子音がなる。ええっと、これはどうやってつっこんだらいいんだろうか。中島は携帯を気にすることなく俺が食べかけのティラミスにスプーンを入れる。
「直人くん、一口ちょーだい」
「…ああ」
「やーん、可愛いー」
「目の保養ねぇ~…」
「俺のも一口あげる」
「…いらない」
「いいって、あーん」
中島がチーズムースを一口すくってティラミスのお礼にとこちらへスプーンを向けてくる。
っていうかあーんは無いだろう。
自分で掬って食べると言ったのに中島はいいからの一点張り。何にも良くないと言い返そうとしたら無理やり口につっこんできた。
顔を少しそらしたせいで口端におもいっきりムースがぶつかる。唇についたムースを舐め取りながら、膝の上に落ちた屑を指で払っていたら、不意に中島に顎を掴まれた。
「こっちにもついてるよーん」
止める暇もなかった。くい、と顎を彼の方へ向かされたと同時に唇の下へ付いたムースをぺろりと舌で舐めとられた。突然の事に体が固まる。視線だけを中島の方へ向けたら、嬉しそうに目を細める表情が見えた。
「え」
「「キャーっ」」
俺よりもいち早く我に返った姉妹は黄色い声を上げて顔を赤くしながら声を殺して叫ぶ。
「ちょちょちょちょっと、今のは反則じゃないのぉッ!」
「キャーっもーっ、びっくりしすぎて撮りそこねちゃったっ。敦くんもっかいやって!」
「いいよー」
「やめろ!!」
「「「えーっ」」」
思ったよりも低い声が出てしまった。「えーっ」じゃないだろ、この場所で彼女達を目の前に男同士でやるか普通…!俺は何も間違っていない。間違っていないはずだ。
「直人くん顔真っ赤ー、キャハハッ」
「照れるなよ直人、ほらもう一回…」
「黙れ中島ァ……」
「んふぅ、怒った直人くんもス、テ、キ。アタシもやってあげよっかぁ?」
早く帰らせてくれ…。
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