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真実と膿む傷にしおりをはさみました!
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真実と膿む傷
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***
「えーと、舞台はお金持ち学校で? 主人公の女の子をめぐって、実は幼馴染みであり主人公の初恋相手でもある先輩の直輝と、同級生で仲の良い紺藤結葵と、主人公の憧れの先輩である俺、が奪い合う良くあるラブストーリーね。 逆ハーレムものか」
「詳しく言うなら王子様と家畜だな」
「家畜って俺達かよ」
「他に誰が家畜だって?」
「……」
「主人公と小さい頃に結婚の約束をした時点で爽達は虫けら以下だろ」
「うるせーな!」
撮影の合間にある休憩の時間、
今回撮影する映画のシナリオを今更になって爽が興味を持ったように台本を復唱する
主人公と幼い頃に出会っていた俺が役をする一つ上の先輩との思い出を、主人公は大人になるにつれて忘れていたけど俺が役をする先輩はずっと主人公との約束を覚えている訳あり設定
それから爽が演じる先輩役に恋をしている主人公に近づいた俺が横から奪うって内容
こうやって俺が説明する度そんな悪い言い方しないの!なんてマネージャーである篠田さんは困っていたけどやっぱり何度読んでもそうとしか思えない。 シンプルに略奪愛だよな、俺が現れなきゃ主人公と爽の役はくっついてたわけだし
「この原作めちゃくちゃ人気らしいから直輝も流石にビビってんだろ〜」
「それは爽だろ」
「バーカ! 俺様は何でも出来るスーパーカリスマだっての」
「はいはい」
台本をパラパラと捲りながら考え込む
プレッシャー云々じゃなくて
本当にこの紺藤結葵には好きなヤツを奪われたばかりなのに何ともまあタイミングのいい事だと気分が悪くなるのは許して欲しいぐらいだ
幼い頃の思い出か・・・・・・
忘れられるなら俺も忘れたい
消せるもんなら俺も消したい
でもきっと消したら俺は俺じゃなくなる気がしてならないのは数日前の事があってもそれでも祥への思いが断ち切れないからなのか
「あ」
「今度は何?」
「い、いや、何も無い」
「……隠すな」
「ほっ、本当に!」
隣に腰掛けていた爽が驚く声を上げるなりバツが悪そうに口を閉じる
明らかに何かあった癖して今更隠そうなんて出来ると思ってるならこいつは本当に間抜けだ
爽が見ていた先へと視線を送るとそこには紺藤結葵と一緒にアシスタントである祥が一緒にスタジオへと入ってきた
「……」
「だ、だから何も無いって言ったのに」
「別に祥が居ただけだろ」
「……お前が悲しむかなって」
「何で祥を見ただけで俺が悲しむんだよ」
「……」
馬鹿だけど空気が読めない奴じゃないからここ数日俺の祥に対しての対応の変化に気づいているのかもしれない
そうじゃなくとも俺は祥の事になると反応しやすいだなんて言われていた程だからこの無関心さが逆に不自然なんだろうか
「……祥君さ」
「……」
「元気無いよな……何かあったんじゃねーの?」
「本人に聞けよ」
「……お前も……。 元気ねぇよ……」
「爽と違って仕事が詰まってるからね」
「な……! うるせぇこの売れっ子!」
貶してるんだか褒めてるんだかわけのわからない文句をつけてくる爽を横目に俺の意識は祥へと向いていた
祥の元気が無いことなんて気づいてる
三年ぶりに戻ってきた時から
久し振りに見た祥の雰囲気がどこか憂いているのも消えそうな危なげなその笑顔も
俺がいない間に祥にとって良くない何かが起きたんだと想像する事は安易なことで
その日よりも今目の前に立つ祥の方がうんと覇気も元気もない事なんか痛いほど気づいてる
じゃあどうしてそんな表情するんだって
同じ職場に元カレの俺が居るからバツが悪いのか
嘘をついたことに罪悪感を抱いているのか
それともまた無理して一人で何でも背負い込んで笑って誤魔化してるのか
祥にとって紺藤結葵と居ることは幸せじゃないなら、今すぐ奪い返してやりたいなんて思う俺は結局三年間で何一つ成長出来ていない
「なんか紺藤結葵ってちょっと怖いよな〜」
「怖い?」
「完璧過ぎてって言うか」
「へぇ」
「昔のお前にそっくりっつーか」
「……」
「笑ってるけど笑ってない感じが嫌いだな俺は」
「爽に嫌われるなんて紺藤結葵も有難いだろうね」
「お前な! 俺は先輩なんだぞ?!」
「だったら先輩らしくしろって何回言ったっけ」
「え、えーと……いち、にい、さー」
「……アホ」
指折り数え出す爽に呆れる半分笑ってしまう
もっと爽やかぶったナルシストだと思ってたけど案外素直なバカぐらいまでには位置づけは上がっていた
笑う俺を見てポッと頬を赤くした爽の肩を軽く叩いて咎めると慌てて首を横に振っては再び台本へと視線を下ろした
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