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走って。拓海sideにしおりをはさみました!
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走って。拓海side
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冷たい雨に、俺の息が溶けていく。
鍛えたはずの心臓も、顧問に褒められるほどの足の速さも、夏に鍛えた持久力も。
すべてなくなったように、重たくて。
嫌な音で脈打つ鼓動がうるさくて、胸を抑えた。
「俺のっ…馬鹿野郎…」
叫んだつもりの声さえも雨に吸い込まれた。
歩いて5分の俺の家が見えても、俊哉の姿は見えなかった。
道路から、玄関に鞄を放り投げた。
人に嫌われるのが、いじめられるのが、避けられるのが怖くて身につけた、へらへらと笑うこと。
裏で何を言っているか分からない、女の子たちに嫌われないよう身につけた、愛想、ノリの良さ。
あのとき振り払うのは簡単だったはず。
それでも、怖くて、俊哉を追いかけられなかった。
今、俺に必要なのは俊哉なのに。
永遠なんて無い。
中学のとき付き合った女の子たちは皆、プリクラに『forever』と簡単に書くけれど。
永遠って3週間?って思ってた。
それでも、永遠じゃなくても、大切に思える限り一緒にいよう、と笑いあったのに。
女の子にへらへらする俺に、愛想を尽かされたのかな、なんて悪い考えがよぎる。
俊哉がいつも電車に乗る駅まで、あと3分。
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