アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
妖怪化学 9にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
妖怪化学 9
-
無事に授業も終わり、元の姿に戻った稜と阿久津をみて、また不思議な気分になる。
こうやってみると、人間も妖怪も対して変わらないのかもしれない。
寮に帰り、ふと洗面台の鏡に視線を落とす。
持って生まれたこの狐色の髪の毛。
もともと長いこの髪の毛が、鬼になると肩まで伸びていた。
おでこのあたりを指でゴリゴリと押してみる。何の変哲もないおでこのここら辺に、ツノが生えていた。青いような、緑色のような、それでいて透明感のある不思議な色だった。
あれが本当の自分。
身体が軽かったのを覚えてる。
凄く小さくて狭い器に押し込められているような、もやもやした気持ちが、まだ残っている。
そんなことを考えていると、ガチャ..と扉の開く音がした。
ちょこちょこと歩いて扉の方を見ると、銀司さんが少し辛そうな顔で立っている。
「おかえりなさい、銀司さん。体調良くないんですか?」
そう聞くと、銀司さんは少し無理をしたような笑顔で、微笑んだ。
「ただいま。万全とは言えないけど、大丈夫だ」
そう言って、前髪を軽くいじる。
ああ、嘘ついてる。
本人はきづいてないみたいだけど銀司さんは、嘘をつくとき決まって前髪をいじる癖がある。
本当は結構辛いんだろうな
なんて考えながら、銀司さんに手を伸ばす。
ほっぺをむにーーーっと掴み、両側に引っ張ったり、少し長い前髪をわさわさしてみたり。
「....なに可愛いことしてんの」
なんて言う銀司さんは無視して、続けて頭を撫でたり、ほっぺたに手を当てる。
辛そうだけど、普段と変わらない。
普段と変わらないように見えて、実は結構弱ってる。
俺と一緒にいたら、楽になるのかな
なんてちょっと自意識過剰かな
まあ、そんなことどうでもいいや
そう思って、ゆっくりと、銀司さんにキスをした。
「.....ッ」
すぐに離れて銀司さんの顔を見ると、一瞬だけ驚いたような照れたような顔をした後に、ニヤリと笑った。
......まずい。
そう思った時には、もう遅かった。
「ん.....ぅ...」
ゆっくりと優しいキスをされ、さらにそれは激しく、熱を帯びていく。
「ふ...ぅ...」
吐息のような声が、静かに漏れる。
なんでこんな、キスうまいんだろ
ぎゅっと銀司さんの腕を掴むと、背中に回されていた手が、ゆっくりと動く。右手でうなじ辺りを抑えられ、左手でゆっくりと腰を撫でられる。
ゾクゾクとした何かが、身体を走る。
「ん...はっ...、」
苦しくなり唇を離すと、コツン、とおでこが合わせられる。
至近距離で見える銀司さんの唇が、酷く卑猥に見えた。
「誘ってきたの、若葉だからな」
「....ッ」
熱のこもった声が、全身を熱くさせる。
付き合ってから何度もキスはしたけど、全部銀司さんからで、抱き合って寝たこともあるけど、それ以上のことは何もしてなくて。
ドクン、ドクン、と心臓が大きな音を立てている。
ああ、うるさい。
心臓とまれ。
そんな思いも虚しく、心臓は脈を打ち続ける。
ゆっくりと、銀司さんの分厚い胸板に、顔を擦り寄せる。
「俺、今日ね、鬼になりました」
ゆっくりと話すと、優しく抱きしめながら、頭を撫でてくれた。
「俺、本当は怖かった。17年間生きてきた俺が、俺じゃなくなったみたいで。今までのものも全て無くなって、怖かったんだ。」
銀司さんは、黙って頭を撫で続けている。
その優しさが余計に、胸に沁みた。
「ツノが生えてた。髪の毛も肩まで伸びてた。でも一番怖かったのは、その姿が不思議と自分にしっくりきて、身体も心も軽くなったこと」
「....鬼の姿の若葉は、きっと恐ろしい程に綺麗何だろうな」
銀司さんはそう言って、涙の流れる頬にキスを落とす。
「若葉、お前はお前だ。鬼でも、鬼じゃなくても。17年間お前として生きてきた事は、誰にも変えられるものじゃないし、嘘や偽りなんて物でもない。紛れもなく、お前自身だ。不安何だろう。そんな不安、俺が忘れさせてやるから、お前は十朱若葉として、精一杯今を生きろ」
強く、優しいその言葉に、涙は更に溢れていく。
「...ありがとう」
小さく呟いたその言葉は、静かに銀司さんの唇へと消えていった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
66 / 117