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今年で二十三歳。遅いスタートだ。
でも私の決意は固かった。
実家に帰り 生まれて初めて両親に頭を下げた。今までの怠惰な生活を改め、目標に向かって努力する決意を伝えた。
金銭面でも迷惑をかける事になる。国立とはいえ 決して安くない学費が丸々パーになるのだ。それに加え これから専門学校にも通わなくちゃならない。本当に申し訳なかった。
だけど両親は認めてくれた。本気でやるなら応援してくれるとまで言ってくれた。嬉しかった。絶対、失望だけはさせたくないと思った。
その足で叔父さんの家を訪問し、心から謝った。姪の立場を利用して好き勝手に振る舞ってた事、会社の皆さんに沢山迷惑をかけた事、派遣先でも足手まといにしかならなくて会社の名前に泥を塗った事。そして中途半端なまま放り出して せっかく入れて貰った会社を辞めようとしている事。
叔父さんは目を瞑ったまま終始口を挟まず 私が全部話し終わるまで聞いてくれた。怒られても怒鳴られても自業自得だ。覚悟を決めて叔父さんを見上げると 優しい顔で笑ってた。そして一言『頑張んなさい。』とだけ言って、私の頭をくしゃっと撫でてくれた。
それは私が子供の頃からの叔父さんの癖で 私は 久しぶりに嘘泣きじゃなく本物の涙を流した。
後任は遠藤さんに決まった。ちょうど 年末で派遣期間を満了で終えていたみたいで 引き継ぎも兼ねて夜、食事に行った。
『小川さんは お洋服好きなのね。そういう方面で働こうとは思わなかったの?』
遠藤さんには本当に感謝している。
行動に移した直接のきっかけは井上さんに振られた事だったけれど 遠藤さんの あの言葉は ずっと心の何処かに引っ掛かっていた。あの言葉が無かったら 私は今でも逃げたままだったかもしれない。スタイリストになりたいなんて夢さえ忘れたまま…。
今 私はアパートを引き払い叔父さんの家にお世話になっている。収入が無くなり学費に加え家賃まで払って貰うのは忍びなく、かといって地元に専門学校は無いし、通うのは遠くて思って困っていた所、叔父さんが助け船を出してくれた。叔父さんは『優実ちゃんがフラフラしない様に監督するんだよ。』と言って笑ってくれたけど 結局最後まで私に甘いままだった。
色んな人に迷惑をかけ、助けられ、私は新たな道を歩もうとしている。言われなくても もうフラフラするつもりは無かった。
専門学校にはやっぱり色んな子が居て 目的意識をしっかり持った子も居れば、昔の私みたいに遊び感覚で学校に通ってる子達も居る。ろくに授業も聞かずギャーギャー騒いでいるグループを見ると昔の自分を見ている様で少し胸が痛い。でも注意はしない。自分で気付かなければ意味が無いのだ。私だって大学の頃、仮に誰かが親切で注意してくれたとしても聞く耳を持たなかったと思う。あの子達も早く気付けばいいなと思う。
遠藤さんとは今ではメル友の仲だ。
結局 あの夜、まともな引き継ぎなんて出来ずに終わった。仕事に全くついて行けなかった私は 伝えるべき事、注意すべき要点が何一つ分からなく、そんな私を遠藤さんは笑って許してくれた。
途中からは 私のお悩み相談室みたいになって 色々とアドバイスまでして貰った。本当に馬鹿みたいに親身になってくれて、私なんかの為に涙を流して応援してくれた。
『遅すぎるなんて事は絶対にない。』
彼女に言われたら 本当にそう思えるから不思議だ。人生なんて短い。でもだからこそ間違えたら何度でもやり直せばいいんだと教えてくれた。
『要はそこで立ち止まらなきゃいいの。』
私は今度こそ 遠藤さんの言葉を胸に刻み、一歩一歩少しずつでも前進して行こう。
過去の自分は消せないけれど 未来の自分はいくらでも変えられるのだから。
小川side END
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