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王妃の祈り・4 (R18) にしおりをはさみました!
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王妃の祈り・4 (R18)
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首元に抱きついて、広く張りのある背中に手のひらをを這わせる。
「ふあ、あ、あ、セレム、様」
上ずった声で名前を呼ぶ。オレだけに許された、特別な名前。
美しい筋肉に覆われた体を、こうやって撫でることができるのも、愛することができるのも、オレだけに許された特権だ。
力強い腕に、ぐっと抱かれる。
「オレ以外見るな」
そんな王様の言葉と共に、繋がったまま、再びベッドに沈められた。
「あっ」
中を突かれる角度が変わって、衝撃に声が漏れた。
脚を大きく押し開かれて、はしたなく迎え入れてるのに、それを恥じらう余裕もない。上から覆いかぶさる男の重みに、幸せで幸せで、今にも達してしまいそう。
「愛してる、アイタージュ」
熱のこもった囁き。応える間もなく、激しい揺さぶりが始まった。
「んっ、ああーっ」
甘えた嬌声と共に、シーツの上に踊らされるl。
シャンシャンシャンシャン、シャンシャンシャンシャン……。浮いた両脚の鈴が鳴り、初めての夜を思い出す。
身も心も、王様のものになった夜。賭けをして負けて、ああ、でも、今となっては、本当に「負け」だったのかよく分かんない。オレの勝ちだったんじゃないのかな?
初めての観客、初めての宴会、初めての音楽、初めての舞台。そして貰った、初めての拍手と、称賛。その興奮も冷めないうちに、この同じ部屋の、同じ寝台に運ばれて抱かれた。
シャンシャンシャンシャンシャン、シャンシャンシャンシャンシャンシャン……。
あの時と同じ鈴の音が響く。
「ああーっ、ああっ、んんんう、ああっ……」
鈴に負けないくらい啼かされながら、必死で王様の腕に縋る。
「セレム、セレムさま……っ!」
身をよじりながら、無我夢中で名前を呼ぶ。
鈴の音に合わせて揺すられてるのか、揺すられるたびに鳴らされてるのか、もうよく分かんない。王様を感じるのに夢中で、何も考えられなかった。
ただ王様の腕の中、彼のリズムで踊らされた。
激しく鳴り響く鈴の音の中、王様の強い声を聞いた。
「この先は、オレだけを見て踊れ」
月だろうと、太陽だろうと、たとえその加護を受けてても許さない。自分以外を見つめて踊るな。――王様はそう言いながら、オレを何度も強く揺すった。
嵐のように激しい営みの後。オレの中に精を散らした王様が、そのままオレを、汗ばんだ厚い胸に抱き込んだ。
「間違えるな、アイタージュ」
まだ整ってない、荒い息。
汗で額に貼りついたオレの髪を、長い指が優しく払う。
「お前が今、こうしてオレの元にあるのは、月に祈ったからじゃない。お前が頑張ったからだ」
言い聞かせるような言葉に、ドキッとした。
「お前が誰よりも見事に踊れるのは、それだけ努力したからだろう。王妃としてみなに認められているのも、それだけ努力してるからだ。王妃という称号に甘えず、背筋を伸ばして前を向き、ふさわしくあろうと頑張ってる」
王様は端正な顔で優しく笑い、オレの目を覗き込んだ。
「お前自身の、努力の結果だ」
それは、思いがけず嬉しい言葉だった。
「オレはちゃんと見ているぞ」
「はい」と返事する声が震えた。じわっと涙が滲む。嬉しい。あの運命の夜に誓ったように、この方に一生お仕えしようと思う。
愛おしそうに頭を撫でられ、幸せ過ぎて目まいがする。
聡明で勇猛で、美しく完璧な「くろがね王」。
「だが……」
響きのいい、深く低い声で王様が言った。
「だがあの夜、たった一人で踊るお前に会わせてくれたことだけは……月に感謝してもいいかもな」
思い出す、今は住み慣れた宮殿の、中庭に面した外廊下。
大広間から遠く聞こえる宴会の音。
それに合わせて踊ってたオレに、パン、パン、と初めて貰えた誰かからの拍手。
宴会を抜け出し、真っ暗な中庭から現れた王様。
『なぜ大広間で踊らない?』
王様はオレに問いかけて……自分のことを、若輩王だと卑下して呼んだ。心に闇を抱えてた。
『オレを信じろ!』
そう、怒鳴られたのを覚えてる。
信じて欲しい、と――真っ暗な瞳が語ってた、あの夜。
『信じます』
思わずそう答えてた。王様の闇を垣間見た気がした。
オレはやっぱり、今でもまだ踊ることと側にいることしか、大してできてるとは思えないけど。でも、それで少しでも、力になれているなら嬉しい。
この人の隣に立ちたい。
「民を笑顔にしたいなら、良い政治をすることだ。肉親や家臣の笑顔を望むなら、お前自身がそうすればいい。みなを笑顔にするのは、月じゃない。アイタージュ、お前だ」
それを聞いて、王様はやっぱりスゴイと思った。
月に祈ることがなくても、望みを叶える力がある。良き支配者で、良き為政者。素晴らしく優しく、聡明で情の深い、誰もに敬愛される「くろがね王」、セレム様。
「お前は、オレが笑顔にしてやろう」
その言葉通り、心からの笑みがこぼれる。
嬉しくて幸せで、大好きで、口元も心もほころんで仕方ない。
深い口接けの後、オレは静かに「はい」と答えた。
再びオレに覆い被さった王様の――その広い背を、月が青く照らしていた。
(王妃の祈り・終)
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