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そん時は、よろしく。にしおりをはさみました!
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そん時は、よろしく。
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謹賀新年、明けましておめでとうございます。
と、数日前にさんざん言った。
新たな年を迎え、早8日が過ぎた。
その間には、まあ、色々あった。
奏が作ったおせち料理をみんなで食べたり、
クソ親父が餅を喉に詰まらせたり、
雪里が、自宅から羽子板を持ってきて奏に勝負を吹っかけてボロ負けしたり。
今までにないくらい、騒がしい日々だった。
悪くはなかった。
いや、ここ数年で一番有意義な正月休みだった。
そして、
そんな俺達が今居るのは、
『人、いっぱい居るね・・・』
『ずらして来たの、オレ達だけじゃないみたいだねぇ』
ガヤガヤと会話が飛び交う中、
プラカードが無いと最後尾が分からない程長蛇の列をなす、
神社の前。
ちょっと遅めの初詣ってやつだ。
事の発端は、正月休み中、
確か、2日のことだったと思う。
年末からズルズルと我が家に居座っていた雪里が、
突然、"初詣に行こう!"と言い出したのだ。
まあ、正月だし、そう言い出しても不思議ではない。
普通の人ならば。
だが、その時その場にいたメンバーには、
その意見はあまりしっくりこなかった。
まず、俺と親父は、正月はどこにも行かず、家でだらだらするのが普通だったから。
正月はどこも混雑していると分かっているのに、わざわざ外出なんてしたくない。
そしてもう1つ。
今年は奏がいるのだ。
奏は人混みが苦手どころの話ではない。
ここ数か月で以前より大分克服は出来てきているようだが、
さすがに正月の、しかも1番人が集まるであろう初詣はキツイだろう。
実際、雪里の発言を聞いた時、奏は困惑した表情をしていた。
当然、却下の流れだ。
しかし、雪里は引き下がらなかった。
"今年だから行かなきゃなんだ"、と。
・・・まあ、その理由を聞いたら納得がいったのだが。
だがしかし、混雑が目に見えてる時期には行きたくなかった。
だから話し合いの結果、
正月休み最後の日の今日、1月8日に行くことにしたのだ。
初詣のピークが過ぎていると、思ったから。
しかし、考えが甘かったようだ。
四方八方に、人、人、人。
友達同士、カップル、家族、はたまたおひとり様。
神社だからか、あまり煩く客引きはしていないが賑わっている屋台も数多くある。
人が全く居ないとは思っていなかった。
いや、むしろちょっと混んでる、くらいのつもりで来た。
しかし、予想を遥かに超えていた。
屋台ももうポツリポツリとしかやってないと思っていたし。
俺は小さく溜息を吐き、両隣の様子を軽く見比べる。
人混みが人並みには平気な雪里は、
"おぉ~"と、ちょっと楽しげな感嘆の息を漏らしている。
まあ、言いだしっぺだし。
これでげんなりした顔でも見せられたら、公衆の面前で蹴り上げてるところだ。
逆に、いや、案の定奏は、
とてつもなく嫌そうな顔をしている。
口数が極端に少なく、そわそわしている。
俺は奏の名前を呼んでみる。
一瞬ビクッと肩を震わせ、"何?"と訊き返してくる。
若干、笑顔が引きつっている。
「キツイなら帰るか?」
『・・・ううん。行く。』
首を振った奏の頭に俺は、"無理はするなよ?"とワンタッチし、
何をお願いするかなどをブツブツ1人で楽しげに呟いている雪里の襟元を掴み、
最後尾へと歩き出した。
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