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そん時は、よろしく。にしおりをはさみました!
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そん時は、よろしく。
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俺は、“で?”と言おうと口を開いた。
しかし、言葉を発する前に、柏崎が動いた。
『先輩。』
「え?・・・って、なっ!」
不意に呼ばれて変な返事をする俺の右手を、柏崎が掴み取り、その手の平に何かを乗せて握らせた。
流れるような動作の後、すぐさま右手から自分の手を放す柏崎。
俺はとりあえず右手を開いてみる。
そこにあったのは、4つのお守りだった。
「柏崎、これって・・・」
『桐生君への合格祈願と学業成就のお守り、
先輩への祈願成就のお守りです。
あ、ついでに長谷川先輩の交通安全のお守りも。』
「そりゃ見れば分かる。
じゃなくて俺は・・・」
『参拝の列に3人で居るのを見て。
先輩のことだから桐生君にお守りを買うんだろうな~と思って先にキープしときました。
で、やっぱり先輩のことだから自分の分は買わないでしょうから。
だから3人分、買っておきました。』
つらつらと俺の訊きたいこととは少しズレたことを語り出す柏崎を、俺は唖然と見ていた。
コイツって、こんな気の利く奴だったか・・・?
何か変なもの食べたとか?
いや、それにしては変わらないところが多過ぎる。
じゃあ、ホントに正気でここまで、してくれたのか・・・?
やっぱりコイツも、何か思うとこあったってことか?
コイツが?
いやいや。それはないだろ。
『先輩。先輩だから許しますけど、言い過ぎです。』
「・・・悪りぃ」
“怒ってませんよ”と、柏崎は目を細める。
眉がハの字になってるから、きっと本当に怒ってはいないのだろう。
コイツは眉で語る奴だ、と、最近気が付いた。
まぁ、俺が勝手に決めつけただけかもしれないが。
それにしても。
俺は柏崎のほうを向き直し、右手に持ったお守りを差し出しながら、ふっ、と笑った。
「ありがとな。お守り。」
『いえ、好意、ですから。』
“厚意”が誤変換しているように聞こえたが、あえて指摘はしない。
なんか、非常に面倒なことになりそうだからな。
俺はズボンのポケットから財布を出し、柏崎にお守りの値段を聞いた。
だが、柏崎は“いりませんよ”と目を細める。
いや、要らないってなんだよ、要らないって。
ここのお守り、一つ4桁が普通って話だったろ?
そんなものを4つも奢ってもらうわけにはいかない。
百歩譲って奢られたとしても、奏の分2つは意地でも払う。
俺の意思が通じたのか、柏崎が“大丈夫ですよ”と更に目を細める。
さっきとは全く違う、不気味なほうの細め方で。
“何するつもりだ?”
そう問い質す前に、俺は柏崎と何かの柱に挟まれ、身動きが取れなくなっていた。
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