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18歳以上ですか?
悪いかよ。にしおりをはさみました!
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悪いかよ。
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まぁ、そんなこんなで、
親父も大掃除隊に参加した。
"連絡出来ない"と慌てふためく親父に代わり、俺が桐生総一郎に電話したり、
俺より不器用なくせに、親父がやたらと高度な場所の掃除をしたがって
案の定イロイロぶっ壊されたり、
親父をリスペクトし過ぎて、2人で訳分からん暴走を繰り広げるバカ共に制裁を下したり。
迷惑極まりない。
バカが1人増えるだけでここまで面倒臭くなるとはな・・・
そんな2人に常にイライラしっぱなしの俺に対し、
奏は苦笑いをしつつ、"大丈夫"と温かく見守っていた。
やっぱ、すげぇな、奏って。
そんなバカ2人への呆れ指数と、
奏への関心が高まる中、
無事に年内に大掃除を終了させることができた。
大晦日の昼過ぎ、俺はソファでくつろいでいた。
その隣で、親父がのほほんとお茶を啜る。
台所では、奏と雪里が年越し蕎麦と御節の準備に取り掛かっていた。
料理の苦手な上村親子は、このクソ忙しい準備にはお呼びで無いらしいので、手伝うことはしない。
2人だけでやったほうが、絶対美味いものが作れるだろうし。
まぁ、それでもちょっとした罪悪感と言うか、申し訳なさはあるわけで。
パタパタと動き回る2人を、俺は微妙な心持ちで見つめていた。
『律。
毎日楽しい?』
「は?なんだよ、急に。」
湯呑みを両手で包み、親父が柔らかな目で台所を見つめて、
慈しむような、どこか儚げな雰囲気を持つ息を漏らす。
『雪里くんが居て、奏くんが居て、
毎日、楽しくて仕方ないんじゃないか?』
親父の問いに、俺は"まぁな"と短く答える。
親父は満足そうに"やっぱり“と微笑みを浮かべた。
その目は奏達に向けられていたが、
見ているのは、もっと遠くのものだった。
「俺だって、もうガキじゃねェよ。」
俺はぶっきらぼうに言い放ち、ソファから立ち上がる。
親父の"そうだな"という声をバックに、俺は奏達の側まで歩いていった。
台所では、先程までまぁまぁ協力していた2人が睨み合っていた。
俺の"どうした?"という問い掛けに、2人が同時にこちらを振り向く。
『年越し蕎麦の主役って、
やっぱりお揚げだよねっ?』
『いやいや!揚げは揚げでもかき揚げだろっ!
な?律!』
問い掛けに答えてるんだか答えてないんだか、質問され返されてるのか、
2人がまた口げんかをし始める。
和風ダシに甘いお揚げが?、とか、
先のせ後のせ選べるかき揚げが?、とか、ギャオギャオと言い合う。
俺は呆れたように頭を振り、溜息交じりに口を開く。
「どっちだっていいだろ・・・
つーか、乗っける必要、あんの?」
『『あるに決まってるでしょ!』』
俺の言葉に、2人が一斉に吠え出す。
あれがなきゃ完成しないんだ、だの、あれ以外に主役は務まらない、だの、耳元で喚かれ、頭まで痛くなってくる。
そんなに完成したのが良いなら、
究極の完成品であるカップ麺でもいいだろ。
赤も緑もお望み通りに存在するぞ。
独自の料理持論を延々語る2人と、それを面倒臭げにあしらう俺。
その三つ巴の間から、いつ来たのか分からない親父がひょっこり顔を出した。
"あの?"と、ビクビクしながら片手を挙げる親父に、3人一度に目を向ける。
『あの?、
その主役のお二方、いらっしゃらないようなんだけど・・・』
奏と雪里が、一斉に冷蔵庫へ走る。
扉と口を開けたままの2人に代わり、
親父がそっと冷蔵庫を閉めた。
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