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5にしおりをはさみました!
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5
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自室に戻ると、二枚並べて敷かれた布団の上に、青年が座っていた。
まっすぐにおれを見上げるその目に笑いかけ、向かい合って座った。
「治癒術というものはすばらしいが、あまり頼りすぎてはいけないな」
心底反省したように言う自分を、彼は首をかしげて見つめた。
「枸々さまに叱られたのですか」
淡々とした柔らかい声は、耳に馴染んで心地いい。
おれは心が凪いでいくのを感じながら微笑んだ。
「まぁ、そんなところだ」
言うと、青年は微かに頷いた。
「枸々さまのお気持ちがわかる気がいたします。
以前、殿下が日向さまと槍のお稽古をなされた際、殿下がよろめかれて脇腹をざっくりと裂かれたときは、とても生きた心地がいたしませんでした」
おれは笑って、肩から衣を脱いだ。
脇腹には、そのときの傷がまだ残っている。何度か治療を施さないと傷痕までは治せない、と枸々に言われ、ならばいっそ残しておこうと思ったからだった。あれ以来、日向と刃を交えるときは、必ず鞘を付けるようにしている。
傷痕をさすりながら、おれはそのときのことを思い返した。
「あのときは、おまえがあんまり泣くから、痛みなんてそっちのけだったな」
「……笑い話になさるおつもりですか」
咎めるような口調が可愛くて、おれはまた笑った。
「いや、いや。嬉しかったのだ。
あの頃のおまえは、いまよりも、感情をおもてに出してくれなかったから」
もともと、無口で無愛想な青年だ。
一番歳が近く、幼なじみのように育ってきたおれでも、これが大声を上げて笑ったり、泣いたりしたところを一度も見たことがない。
唯一、おれの前ではころころと表情を変えるものの、他の者の前では人形のようにほとんど表情を動かさない。
ただありがたいことに、この青年は言葉少なながらも思ったことをまっすぐに打ち明けてくれる。
そんないじらしいところに、おれは惹かれるのかもしれない。
「春臣(はるおみ)」
両手を差し出すと、彼は膝で立ち上がっておれのそばに寄り、白くなめらかなてのひらをおれの手に乗せた。
春臣は、何年もそばにいるおれでさえ、息を呑むほど端正な顔立ちをしている。深い鳶色の眸に吸い寄せられるように、おれは彼のうなじを抱き込み、覆いかぶさって布団に組み敷いた。
耳の下まで伸びた細い黒髪が、白い敷布の上に広がる。髪を梳きながら唇を軽くはむように合わせ、角度を変えてはついばんだ。
眸を覗き込むと、潤んだ目がおれを求める。
口元が緩むのを抑えられないまま、首筋に舌を這わせ、鎖骨に一つだけあるほくろに口付けた。
──すきま風に、行燈の火が微かに揺らぐ。
はだけた胸元は透き通っていて白く、なめらかだ。以前のときの痕がまだ残っているのが妙に生々しい。
てのひらで腿の内側を撫でながら、へその下、腹、肋骨、胸と、下から順に接吻し、白い肌に新たに紅い痕を残した。
「ふ……」
少しずつ息が上がってくる。
衣擦れの音がやけに耳につく。
おれは薄い寝衣の下から小さな蕾を探り、ゆっくりと指の腹をあて、中に押しこんだ。
「んっ」
ぴく、と春臣の足が痙攣する。
ゆっくりと抜き差しすれば、ひくひくと震えるそこが緊張で強張り、おれの指を締め付けた。
口元を押さえている指に軽く口付け、意識を向かせる。
「春臣、おれの名を呼びなさい」
「はい……志野さま」
「もう一度」
「志野さま……」
「ん……おまえに呼ばれると、それだけで、なんだか嬉しくなるよ」
微笑むと、春臣の目が小さく揺れた。
「っ……おれも……」
「おまえも、おれに呼ばれるのが好きか」
こくんと小さく頷く。
喉の奥に絡みつくような熱を感じて、おれは春臣の唇に噛みついた。
「んっ……ん……」
下で指を動かしながら、舌に唾液を絡めて流しこみ、吸い上げて、飲みこむ。
漏れる吐息の音が耳を侵し、知らず識らず鼓動を早くした。
「っ、ふぁ……っ」
つ、と引いた銀の糸を舌で絡めとり、濡れた唇を舐める。
すっかり熟れた目にせがむ色を認めて、おれは乾いた喉で笑った。
「春臣、おれが欲しいか」
囁くと、春臣のからだがぶるりと震えた。
紅潮した頰に汗をにじませて喘ぎながら、おれの眸を焦点のぶれた目で見つめる。
こうして伽をするときだけは、いつも澄ましている顔が快楽に蕩けてゆがみ、眸はおれを求めて熱に熟む。
それがどうしようもなく、おれの情欲を掻き立て、ひどく興奮させた。
「志野さま……」
「なあ、春臣」
春臣の喉が微かに震える。
真っ赤になりながらも、目だけはずっと逸らさなかった。
「欲しい、です……志野さま……」
「それだけではだめだ」
「っ……志野さま……はやく、なか……おれのなかに……いれて、志野さまので、いっぱい、よくして……っ」
聞き終える前に、突き立てていた。
抱え上げた脚がびくびくと痙攣する。揺すりながら奥まで飲み込ませ、長く息を吐いた。
「ああ、もう、たまらないな……
おれは、おまえが可愛くてしかたがないよ」
「う……志野、さま……志野さま……」
「春臣、苦しいか」
少しの間をおいて、春臣は頷いた。
「でも……あたたかい、です」
「……っ」
掠れた、小さな声があまりにも愛おしくて、おれはたまらずつばを飲んだ。
「……揺するぞ、春臣」
囁き、加減をする余裕もなく、柔らかい皮膚に腰を打ち付ける。
春臣の喉から甘い嬌声が上がり、冷静な思考能力を麻痺させた。
「く……」
「あっ、うぁ、あっ、あぁ……っ」
ゾクゾクと全身に広がる熱と痺れが、少しずつ腹の下に溜まっていく。
弾けそうなほどきつく張りつめたそれで、春臣の中を何度も穿ち、犯した。
「や、ぁっ、あぁ、しの、さ、まぁっ……」
「っ……ふぅ……」
「あ、んっあぁ、あっ……」
「ん……春臣……中は、いやか」
「んっ、んん……やじゃ、ない……、はやく……はやくっ」
「そう、急かすな……」
「ん、あっ、はぁ、ぁっ……」
激しく揺さぶりながら、絶頂の瞬間を一気に促す。
思いきり奥まで突き上げた瞬間、どぷっと熱が弾けた。痺れるような快感にめまいを感じながら、たっぷりと春臣の中におれの欲をそそぐ。
歯をくいしばって波が収まるのを待ち、ゆっくりと引き抜くと、孔からつつ、と白濁が溢れ、敷布を湿らせた。
いつの間にか春臣も達していたらしい。
腹が白濁で汚れていた。力なく横たわったそれを根元から握り、残滓を残さず外に絞り出す。
そばにあった手ぬぐいで春臣の顔をぬぐってやってから、からだや手を拭き、汗で湿った髪を指で軽く梳いた。
「……志野さま……」
顔を近づけ、目じりの涙を唇で吸う。
春臣はくすぐったそうに身じろいだ。
「志野さま、……志野さま」
頰に触れていたおれの手に手を重ね、甘えるように頰をすり寄せる。
どきりとして、思わず声が上ずった。
「春臣……」
「志野さま……おれ、あなたのことがほんとうに、好きだ……」
「……」
「志野さま……」
春臣はうっとりと目を閉じ、そのまま……眠ってしまった。
おれはかろうじて喉にこみ上げてきた熱のかたまりを飲み込み、嗚咽をこらえてうつむいた。
それから、そっと春臣の唇に接吻し、男にしては柔らかなその肢体を腕に抱いて、夜が明けるまで眠った。
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