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写真と真実にしおりをはさみました!
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写真と真実
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…掃除でもするか。
最近は自分の家よりも、
彼の家で過ごす時間の方が多くなっていた。
そのせいか、散らかってはいなかったが
隅には埃がたまっていた。
掃除機を手に取り、蓄積されたそれを吸い込んでいく。
綺麗になっていく部屋を眺めていると
少し、寂しくなる。
彼と過ごした時間も、
消えてしまうんじゃないかって。
「そんなこと…ないよな」
リフレッシュのために始めた掃除は、
自分の気持ちをさらに重くした。
**
「すみません、コーヒー下さい」
気分転換のためにやってきたのは、
お気に入りのカフェ。
白髪のマスターが一人でやっていて、
決して大きくはない、静かなカフェだ。
カチャリと音を立て、コーヒーが置かれる。
白いカップに黒が揺れた。
そこに映った自分はひどく冴えない顔をしている。
「いただきます…」
そう言って口をつける。
昔からの癖なのだ。
口内に広がる濃いめの味。
ゆっくり嚥下していくとホッと心が休まった。
「おにーさん」
ぽんと肩におかれた手に、びくりと身体が震える。
声のした方に顔を向けると そこには見覚えのある人がいた。
「た…大志さん」
「やだ…、その名前で呼ばないで下さいよぉ」
ぷくっと頬を膨らませた顔は、男には見えない。
さりげなく隣に座った彼女(?)はオレンジジュースを頼んでいた。
「そういえば、良太と一緒じゃないんですか?」
長い栗色の髪の隙間から真っ白な首が見える。
そこには くっきりと喉仏があり、やっぱり男だなと思った。
「まぁ…ね」
何とも言えない笑みを浮かべてはぐらかす。
“もう終わった”なんて、自分の口からは言えない。
言ったら同時に涙も溢れそうだからだ。
「もしかして…、もう捨てられちゃった?」
その言葉に、心の柔らかい部分が抉られたみたいに痛む。
捨てられた?
確かに…そうかもしれないな。
「そんな感じ、かな…」
ぬるい液体が頬を伝う。
自分に呆れたような笑みを浮かべ、左手で頬杖をついた。
時間とともに濡れていく掌。
こちらを呆然と見る彼女。
「捨てられちゃった…んだな…」
言い聞かせるように呟けば、残るものはたった一つ。
伝えきれなかった、彼への“想い”。
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