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sideアキ: その、本音は 1にしおりをはさみました!
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sideアキ: その、本音は 1
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「…………うん、成る程ね。」
長い沈黙の末、ポツリと父さんの頷くような声が聞こえた
「アキ。」
ビクッ
「っ、は、はぃ、」
「顔を見せなさい。」
何かを感じ取った佐古が、スッと横にずれて俺と父さんの間から居なくなる
「アキ。お前は、レイヤくんの事をどう思ってるんだ?」
(あ………、)
目を見てゆっくりと問いかけられ、自然と体が一歩前に出た
レイヤも腕を優しく解いて、俺の体を自由にしてくれる
そのまま、自分の足でしっかりと立ち…ゆっくりと深呼吸をして口を開いた
「……っ、初めは、大っ嫌いな奴でした、」
入学式での挨拶を聞いて、これがハルの婚約者なのかと絶望した
初めて食堂で話した時も想像してた通りの奴で腹が立って、思わず宣戦布告した
「その日を境に、いろんな事が起こりました。」
シャンデリアの蜘蛛の巣の掃除を押し付けた事
バラバラになってる生徒会を元に戻そうと必死になった事
体育大会を何とか成功させ、メダルを貰った事
決算報告時期に初めてレイヤが失敗をして、放課後遅くまで残って2人で資料作りをした事
雷が鳴って一晩を共に過ごした事
夏休み、勉強会やピアノや……花火を、見せてくれた事
「中身を知って、人格を知って。
いけないと分かっていても…だんだん惹かれていく自分が、いて……っ、」
外側しか見ないその空っぽな心の中は、本当は驚くほど鮮やかだった
副会長たちを楽しそうに教育する姿や初めての失敗に戸惑い焦っている姿
ひとつひとつの感情に素直に反応するレイヤは、本当に純粋で、カッコよくて、暖かくて
ーーー気づけば、泣きそうなくらい……愛おしいと思ってしまっていた。
「多分、この想いに気づいたのは花火の時です。」
ハルの為だけに両親に頼んで上げて貰った、初めて見た花火
レイヤは「こんなしょぼいのじゃなくてもっと大きくて綺麗なやつがある」と言っていたが、俺には充分すぎるくらい大きくて、綺麗だった
キラキラしてて、色んな形があって、ただ……美しくて
チラリと隣を見た時、花火の光に照らされてレイヤの優しく微笑みながら空を見上る顔が見えた瞬間
「あぁ、俺はこの人のことが好きなんだな。」と自覚した
「それからは……もう押し込めようと必死で、」
レイヤはハルの婚約者だからと、必死に想いをしまい込んだ
「でも、無理だったん、です…っ、」
文化祭、容赦なく送られてくる写真が怖くて怖くて堪らなかった俺を、力強く抱きしめてくれた
背中を何度も撫でてくれて、「大丈夫だ」と手を握ってくれた
連れ去られてしまった時も助けに来てくれて、その後の介抱もしてくれた
「〝好き〟って言いたくて…言わないと抑えきれないくらい…好き、で……、」
イロハと月森先輩に手伝ってもらって、後夜祭の日に想いを伝えた
それは〝ハル〟として捉えられたけれど、でも、それでももう…満足だった
「交代の瞬間が来た時は、正直それどころじゃありませんでした。」
ハルとの初めての喧嘩が響いて、他のことは何にも考えられなかった
「でも、落ち着いたら…だんだんと思い出してきたんです。」
ふとした瞬間に蘇る、レイヤの面影
楽しかった体育の時の生徒会室
優しい目と暖かい温度と力強い腕
それらが今ハルに向けられているのだと思った時、どうしようもなく胸が苦しくなって…自然と涙が出てきた
「俺は、嫌な奴です……っ、」
これまで、母さんに何を言われても「俺がハルなら良かったのにな」とは思わなかった
でも、レイヤがハルを心から愛している事を知って
俺がハルのためそうなるよう仕向けたのにも関わらず…嫉妬した
諦めよう諦めようと必死になる心の中には、確かな嫉妬心があって
「ハルだったなら、良かったのに。」と、思ってしまっていた……
「いけない事だと…ちゃんと分かってます、」
レイヤはハルの婚約者で、それは書類上でも既にやり取りされていて、もう覆すことの出来ない事実で
「でもーーーっ、」
この場では泣きたくないのに、ホロリと涙が溢れ落ちた
「どうしようもないくらい…好き……なんです…っ、」
ーーーレイヤの、笑った顔が好き
怒った時眉間にシワが寄るのが好き
呆れた時、大きくため息を吐きながらも結局手伝ってくれるのが好き
俺様な性格の癖して、実は凄く面倒見がいいところが好き
心配して何度も何度も背中を撫でてくれるのが好き
髪に触れる手が好き
俺を捉えて微笑む目が好き
歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれる足が好き
レイヤの全部が……大好き。
「〜〜〜〜〜っ、」
結論の無い、ただの想い
また感情論だと突っ返されて、当たり前の回答
それなのに、目の前の顔は今度は「そうか。」と頷いてくれた
(ぇ………?)
「月森、戻っておいで。」
「はい。」
笑みを浮かべた月森さんが、父さんの斜め後ろいつもの定位置へと戻ってくる
「ハル、アキ。」
ビクッ
「「っ、はぃ、」」
「ーーーーー大きくなったなぁ。」
「「ーーーぇ、?」」
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