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欠片ひとつにしおりをはさみました!
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欠片ひとつ
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今日も倉原が来る前に寮を出る。
登校中昨日とは違い、チラチラとこちらを窺うように見られながら歩く。
昨日の今日でもう俺が『あの』飯嶋明仁だと学園に広まったらしい。
さぁて靴箱はどうなってるかなと見てみるも変わった様子は無し。
やめてと言って聞いてくれる相手とも思えなかったが・・・まぁ何事もないならそれに超した事はなし。
教室に入り昨日と同じように「おはよう。」と挨拶するも、戸惑ったような視線は向けられるが返事は返ってこない。
まぁ気長にやるか、と席に着く。机も特に何もされてないなと確認したところで、教室の出入り口付近の席に座っていた生徒がガタンッと音を立て立ち上がる。
突然の大きな音に自然に視線を向ければ
「お・・・おおおおお、おは!よ!」
顔は伏せたまま朝の挨拶・・・どもり具合や俯いてることから、多分俺に向けられたものだろう。
「おう。おはよ丹藤。」
一応改めて挨拶を返せば凄い勢いで顔を上げ、泣きそうな顔でこちらを見る。
「なな名前・・・知ってたん、だ。」
「そりゃ丹藤、クラス委員長だし。」
丹藤 楓(たんどう かえで)2-Aのクラス委員長で茶道部所属たしか親衛隊には所属してないが
生徒会副会長と同じ茶道部なだけあって早い段階で俺から距離を取った人物。
別に恨んではないが、残念に思ったのを覚えている。
クラスでも地味目な彼だが人あたりが良くクラスでの信頼も厚い、1年は別クラスだったので交流はなかったが
2年になった始めの委員長を決めるクラス投票の時には俺も彼に1票入れた
彼の人柄を好ましいと思っていただけに、距離を取られた時にはひどく落ち込んだ。
と、随分昔のことのように思い出してはいるが
倉原がやってきたのは5月の終わり頃、今は6月中旬だから俺の日常が壊れてひと月も経ってはいない。
それだけの期間で心を殺すだけの事が俺に、『明仁』に起こったと考えると恐ろしいものがあるな・・・
そんなことを丹藤に目を向けたまま考えていると始業のチャイムが鳴る
俺が視線を外すと丹藤も戸惑いを含みつつ席に着く。周りのこちらを窺っていた生徒も着席し、いつものHR待つ雰囲気に落ち着いた。
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