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○○日和にしおりをはさみました!
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○○日和
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とある土曜日。
人々が行き交う街中に、颯の姿があった。
七分袖の浅いVネックの白Tシャツに、黒いパンツ、黒いスリッポン、アクセントに赤いチェックシャツを腰に巻き、何度も腕時計を見ている。
そして、そんな颯を、通行人達がやたらと振り返る。
大勢の人の中にいても、その美しさは嫌でも目立つ。
「………………ちょっと、早すぎたかなぁ………」
唇に手を当て、少し寂しそうな表情がまた、色っぽさを強調し、周りの視線を釘付けにする。
今日、学校は休み。
颯は、愛しい人を待ちわびた。
「ねえ、君………………」
数分に一度、颯の美しさに耐えきれず、馬鹿な輩が声を掛ける。
「………………はい?」
颯が振り向くと、四十代位のスーツを着た男が立っていた
「じゅ、十万………いや、君なら五十万でもいい!ど、どうかな……………これから………」
「……………え………………」
男は、間近で見る颯の容姿に、鼻息を荒くしてよだれを垂らす。
変態には、大好物な美少年。
男の興奮振りに、思わず颯は後退りする。
「おい、オッサン。そいつには、1億積まれても足りひんで」
その時だった。
颯に近付いて行く男の後ろから、いかにも不機嫌そうな関西弁が、二人の間に割って入った。
「大和……………っ」
颯の不安な顔が、一瞬で安堵した顔へと変わる。
愛しい待ち人が、やっと現れた。
「いっ!?イテテテテッッ!!な、な、何するんだっ!?」
と同時に、男の悲鳴とも取れる叫び声が辺りに響く。
苛立つ大和の手が、相手の腕を掴まえ、後ろに捻り上げていたのだ。
「あぁ!?何する?それは、こっちの台詞やろ?ボケッ!汚ねぇツラして、よくも颯に近付いたなァ!二度と側に寄れへんように、両足の骨粉々にして、一生病院暮らしにしたるぞ、コラァッ」
「ひぃ………………っ」
大和は男を見下ろし、腹の虫の収まらない感情をそのままぶつけた。
よくも俺のものに、手を出せたな……………。
そんな想いが、フツフツと沸き上がる。
低い声色で怒りを露にする大和に、男は真っ青になり、腰を抜かした。
「大和………っ!もう、いいよっ………」
大和のただならぬ剣幕に、周囲を歩く野次馬達も遠巻きながら目を離せないでいた。
一見すると、普通のイケメンな高校生のように見えるのに、怒る姿は、下手に関われない程に迫力がある。
誰もが、大和を恐いと感じた。
颯は、大きくなる騒ぎに気を使い、大和の腕を握りしめ、止めに入った。
「アホ!こう言うナメた奴は、一回痛い目見いひんと根性治らへんねん!お前に声かけたんが、どないに罪な事か思い知らせたるわっ」
「大和!駄目っ!……………駄目だったら………お願い」
颯の制止が、大和の怒りに温もりを宿す。
昔なら、キレた大和を止められる人間は、父親だけだった。
その位、颯に出会う前の大和は、鋭利な刃物のように鋭く尖っていた。
それだけ、颯に出会って大和は、自分でも気付かないうちに変化を遂げていた。
「……………チッ…………颯に、命拾いしたな………オッサン…………」
大和は男を離し、顔を背けた。
颯が、愛しくてたまらない。
傷付けたくない。
守ってやりたい。
そう思うと、身体がセーブ出来なくなる。
恋は…………難しい………。
「こ、こ…………殺される……………っ」
男は震える声で呟くと、転びそうになりながら、逃げて行く。
殺される……………。
向こうにいた時は、何度そう言わせただろうか。
自分でしてきた事が、どれ程えげつないか…………今更のように、思い知る。
悔しそうに背を向ける大和を、颯は静かに見つめ、隣に歩み寄った。
「ありがとう、大和……………大和が来てくれて、凄くホッとした」
「……………………颯」
颯の笑顔に、大和の心が救われる。
「今日の大和、一段と格好いいね。初デート、ずっと楽しみにしてたよ」
オシャレが好きだと言うだけあって、大和の私服姿に、颯は惚れ直す。
ロイヤルブルーのコットンジャケットを袖口を捲って羽織り、Uネックの白Tシャツにベージュのパンツを少しロールUPして、足元は白いスニーカー。
普通に雑誌に出てくるモデルみたい。
「一緒に歩いたら、鼻高いなぁ………」
「………………よー言うわ。俺の方が、自慢や」
初デート……………。
そうや、初デートやった……………。
大和の心情を和らげようと、話題を変える颯が、何よりも可愛い。
颯が気にしなかったら、今ここでキスしたい…………大和は、ウズウズする身体と戦う。
「どこ行く?大和、まだこの辺り、よく知らないよね?何、したい?」
ああ、ヤバい……………マジ、可愛い。
大和の顔を覗き込み、質問してくる颯は、一種の犯罪だ。
長い睫毛の綺麗な瞳、紅い潤った唇…………。
理性を保てと言う方が、無理。
……………暴走する前に、大和は自分に素直になる事にした。
「…………………ホテル、行きたい」
「…………ホ……………テル………て」
颯を見つめ、真顔で言う大和に、颯の顔はみるみる赤くなる。
「や、大和………………そ、それって………」
颯は赤い顔を俯かせ、戸惑いながら顔に手を当てた。
その仕草の、なんともツボな事…………!
あかん………………俺、死ぬわ………。
「お前を抱きたい…………言う事や」
「やま……………っ………」
きゃぁぁぁ………………っ
身体が、抑えられなかった。
大和は俯く颯の腕を掴むと、思い切り抱き寄せ、公衆の面前で熱い口づけをした。
周りの通行人達の驚きの声が、二人の抱擁を包み込む。
「………ぁ………や……まとっ………っん………皆見て………」
突然の事に動揺し、大和の服を握りしめる颯の腰を抱き、大和はより深くに入り込んでいく。
「うっさい…………見たい奴には見させとけ。お前が俺のもんやって………………皆に知らしめられるやろ………」
「大和…………っ………」
愛しさが、止まらない。
腕の中に収まる颯が、大和の身体に拍車をかける。
今すぐ、抱きたい。
一日中、一晩中、許される限り…………颯を求めたい。
雌を欲する獣のように、大和の身体は発情する。
「俺に抱かれたいって、言えや。言うたら、いっぱい愛したる…………」
颯の耳元で、大和はいやらしくも淫らに颯を誘い出す。
「………ぁあ…………ズルい………」
感覚が、麻痺していく。
周囲の目も気にならない程に、大和に甘えてしまう。
颯は、大和の身体に身を沈め、大和の強引さに溺れる自分を確かめた。
「言わへんと、抱いたらんで?ええのんか?」
「………ぃや…………やだ………やだ、大和…………」
熱が、身体を伝わり、大和の胸の音が、颯の心を囃し立てる。
身体が疼いてたまらない。
「………………いて…………」
「……………ん?…………」
「………抱いて………大和。早く……抱かれたい………」
大和の中で、小さく答える颯に、大和は独占欲に満たされる。
「ほな、行こう…………!スイートルーム貸し切りや」
「えっ…………ス、スイートルーム!?」
颯の手を握り、笑顔を見せる大和の言葉に、颯は顔を上げて聞き返す。
「当たり前やろ?お前を抱くのに、チンケなホテルなんか行けるか…………っ。高級ホテルのスイート、乗り込んだるわ」
「えぇ……………」
大和は颯の手を引き、人混みをかき分ける。
周りを惹き付けた、イケメン男子と美少年のラブシーンは、大和の誘導勝ちで幕を引く。
空は、青空。
初デートにはもってこいの、デート日和。
行き交う人が振り返る。
男子二人の手を繋ぐ姿。
恥ずかしさは、何もない。
互いが、自慢の恋人。
気持ちは、一つ。
行き先は、一つ。
愛し合いたい。
求め合いたい。
それって結局、今日は何日和……………?
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