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神保町と都。にしおりをはさみました!
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神保町と都。
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…………あれ、……神保町までってこんな遠かったっけ、……
俺たちが今向かっている古本屋は、言わずと知れた本の街"神保町"の一角にある昔から通ってる古本屋で、いつも大学から直で寄るときはだいたい20分くらいで着いたような気がしてたんだけど……
……今日は都が見るせいか、体感時間は倍くらいに感じる……。
普段だったらもう着いてるくらいの感覚だ…………
俺はもう一度チラ……っと、目の前の奴に目を向ける。
相変わらず一切動かない都は、今時の若者みたいにスマホをいじってるわけでもないのにずっと俯いている。
………、つーかやっぱり、……距離近くね、……?笑
さっきも言ったけど、満員電車なわけでもないのに、俺と向かい合うこいつとの距離は多分50センチくらいしかない。
…………もっとドアの両脇にいくとか、……距離保ってつり革にでも捕まればいいのに、…なぜわざわざ俺と一番近いところの手すりに……、って……、、っこいつ手首細っ!!!!!
至近距離だから都より10センチ以上身長の高い俺は、結構下を見なきゃ都を見ることが出来ないため気付かなかったけど……その、手すりをつかむ都の手首が、あまりにも細い、…………。
、女子かよ、いや女子とかより細えし………つーか骨とか筋とか透けてるし、……
しかも、…指……めっちゃ綺麗、……………うわ……なんつーか、……人形みたいだし、……
その細くて真っ白い指の先端にほのかなピンク色の爪が付いていて、…いや、それは人間としては当たり前の事なんだけど、それすら当たり前に感じないような造形美を感じさせる。
俺の目線はもう一度その指から戻っていき手首をを通り、…肩、……そして、顔へと移る。
…………あ、……、…どうしよ、……、こいつやっぱりすげえ綺麗だ……、。
身長差や距離の問題で今まで全然こいつのことなんて見てなかったけど…こう改めて見てみると、逆にこの身長差や距離感のおかげで都のことを見下ろす形になっていて…
もちろん今まで髪サラサラだな、……とか、睫毛なげぇな……とかそんな事は分かりきってはいたんだけど、
至近距離のせいか…そのサラサラの髪も触れたくなるようになぜかすごく透明感を感じるし、…上から見ているせいか、その長い睫毛もいつもより寂しげで、…それなのに愛おしさを感じさせる。
、ーー……カシャカシャッ……
俺はそう気付いたらいつものように反射的にこいつに向けてシャッターをきっていた。
…今まではこいつには負の共通点ばっかりを見つけていたけど、……俺、一つ気づいたかも、 。
…………俺は……こいつのいる"ふとした日常"が好きなのかもしれない、。
……今までももちろん好きなものは沢山あった、。魅力的に感じるものとか、、……そんなものは沢山。
俺はできるだけそういうものにカメラを向けてきたし、被写体は常にそうでなきゃいけないと思っている
だからなるべくそうでないものでも、その中に魅力を見つけたり、……良いところ、もちろん悪いところも、ちゃんと自分の中で理解してから撮っていたんだけど、
こいつの場合、そうする必要なんてなにもなくて。
職業柄、こいつより物理的に、見た目的に、美しくて整ってる奴なんて今まで沢山見てきた。
そりゃあ都も普通に考えたらイケメンの分類で綺麗な人間には入る奴だとは思うけど、……でも、もちろんそれ以上に綺麗な人は沢山いる。
もし、モデルのオーディションみたいなものがあって仮にカメラテストする中に都がいるとしよう、。……そしたら多分、俺は都の存在にすら気づかずに多分一言も声をかけずにそれは終わる。……でもそれは、撮るっていうことが目的だから。
ふとした時に都を見る。
当たり前のようにこいつはただの日常を過ごす。
ーーー……でも、その、こいつがいるただの日常は、都がいることによって、俺にとってはただの日常ではなくなる。
初めてこいつにシャッターをきったあの階段も、あいつがコケて宙を舞って、全てが完成だったのだ。ただの階段がこの異様な雰囲気をもつ都がこけたあの瞬間にただの階段ではなくて、真っ白い空間へと変わった。
あの時の図書館だって、こいつがそこで何気なく本を読んでいたことによって、窓から都に光が降り注ぎ、切なさや寂しさを照らし出すことによってただの図書館ではなくて、セピアの褪せる空間になる。
そして、すべての状況に置いて、都自身もその空間に溶け込んで異常なまでに魅力的になる。
いつもの日常が、都がいることによっていつもの日常じゃなくなる。
こんなにも日常は綺麗なのか、と。そしてまたその中にいるこいつもこんなにも魅力的なのか、と。
そして俺は、そんな都が映し出す"ふとした日常"がどうやら好きなのだ。
カシャカシャカシャカシャッ
電車の無機質な冷たい蛍光灯に照らされる都の髪、
電車の揺れにより、ゆらゆらと揺れる都の俯く睫毛、…
今、こいつは電車という日常の中にいるという事が、
その電車という要素が全て都の中に映し出されてこれほどかというまでに美しさを発揮する。
なんなんだ、……この相乗効果、……。
……まるで都はふとした魅力を映し出す鏡みたいだ、……。
、……こんな空間を撮る、以外の選択は俺にはなかった。
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