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某月某日神社にて。にしおりをはさみました!
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某月某日神社にて。
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驚いた。
まだこんな自分にも行動する気力が残っていたなんて。
棒のようになった足に鞭を打ち、前のめりになってでも走った。
木で出来た境内は、いきなりの雨にも全く動じずそこに佇んでいた。
僕は持っていた一円玉と十円玉をただ、がむしゃらに賽銭箱に入れた。
「か……っ、かみ、さま……!!」
そして、震える両手を必死に合わせ、僕は何度も願う。
──お願い、あそこから僕を連れだして。
なんだっていいんです。連れだしてくれさえすれば、奴隷にだってなんにだってなるから。
初めての感情だった。
今までこんなこと思わなかったのに。
もう僕はびしょ濡れで、自分を今濡らした液体が涙か汗か雨粒なのか区別もつかない。
なんだか体の力が抜けていって、〈かみさま、ごめんなさい〉と念じながら賽銭箱に寄りかかって座り込んでしまった。
……ダメだ、こんな所で油を売っていては。
今なら許してもらえる。
ぼくの、かぞくは、やさしいんだから。
『お前、ただで飯を食わせてもらって感謝しろよ』
ちがう。
『あーあ、あと一ヶ月であんたが出ていくなんてせいせいするわ』
ちがうんだよ、これは。
『てめーの顔を見るとイライラするんだよ』
ぼくがわるい。
『ひろいっ子なのに俺らと口がきけると思うなよ』
ごめんなさい。
『ゼロ、だってよ。お前に相応しい名前だな』
『『『『お前なんかいらない』』』』
どうしてさっき、逃げたいなんて思ったんだ。
帰らなきゃ。
お願いだから、足よ動いてくれ。
「おい、そこのボウズ。 邪魔だ」
雨の境内に凛とした声が響く。
そこには、着物姿の男の人が、傘もささず立っていた。
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