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温もりと涙にしおりをはさみました!
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温もりと涙
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「お、大泉くん…?」
彼は俺を庇うように五十嵐さんとの間に入る。
大泉くんも、俺と同じように雨に濡れていた。
「もう氷室に関わるなって言っただろ!」
「だって、だって……」
「もうお前とヨリを戻すつもりもない、今後お前を好きになることもない、それに俺には……好きなやつがいるってハッキリ言ったはずだ」
え……。
好きな……そうなんだ、大泉くん、好きな人いたんだ。
そりゃそうだよ、うん、年頃だし好きな人くらいいるよね。
あ、どうしよう、泣きそう。
「だから、頼むからもう、氷室にも、俺にも関わるな」
「…………」
「行こう、氷室」
大泉くんが俺の手を掴み、そのまま2人で雨の中に飛び出した。
掴まれている所から伝わる彼の体温にドキドキしながら、走って、何処に向かっているのか分からないまま、俺はひたすら大泉くんについていった。
そうして辿り着いたのは、一軒の家だった。
きっと彼の住んでいる家なのだろう。
鍵を開け玄関に入った所で、彼の手は俺の手から離れていってしまった。
「その、ごめん、急に連れてきちゃって。ここ俺の家。近かったから」
靴を脱ぎ家に踏み入れた彼に、俺も入るよう促されたが躊躇する。
だって今俺雨でびしょ濡れだから。
「大丈夫、俺も濡れてるし。お風呂入りなよ、そのままじゃ風邪ひいちゃうからさ」
「い、いや!そんなそこまで……」
「いーからいーから、ほら入って」
優しく手を引かれ、俺はそろりと家に足を踏み入れた。
そうして脱衣場に案内され、風呂場の使い方を教えて貰った。
「濡れた制服とか、その、下着とかも全部洗濯するから、洗濯機に入れちゃっていいよ」
「…う、うん」
「じゃ、ゆっくり入っといで」
そうさわやかに笑って、大泉くんは脱衣場を出て行ってしまった。
ひとり取り残された脱衣所で、俺はひとつため息をつき、ここはお言葉に甘えさせてもらおう、と手に持ちっぱなしだった上着、そしてシャツ、ズボン、下着と靴下を脱ぎを洗濯機に入れる。
そうして風呂場に入り、教えて貰ったように蛇口を捻りあたたかいシャワーを頭から浴びた。
そういえば、どうして大泉くんはあそこにいたのだろう。
まだ授業が終わっている時間じゃなかったはずなのに…。
……昨日の事、謝らなきゃな。
彼の幸せとか思って五十嵐さんにチケット渡しちゃったけど、結局嫌な思いさせちゃった、だろうし。
ちゃんと仲直りできるかな。
そこでふと、彼が五十嵐さんに言っていた「好きなやつがいる」という言葉を思い出した。
ズキっと胸が痛み、また涙が出そうになる。
泣くな、僕が男な時点でこの恋は叶わないって決まってるんだ、わかってたことだろ。
けれど、わかってたことだったけど、胸の痛みも溢れる涙も、今の俺にはどうすることもできなかった。
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