アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
部屋着と匂いにしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
部屋着と匂い
-
自然と涙が止まってくれるのを待ってから、俺は風呂場を出た。
そういえばタオルとかなかったような、と思ったところで、籠にクリーム色のバスタオルと、新品であろう下着、それからグレーのスウェットのズボンと黒のロングTシャツが置かれていた。
タオルでからだを拭いて、衣服に袖を通す。
おそらく、普段から彼が使っている部屋着なのだろう。
全身から大泉くんの匂いがして、何だか抱きしめられてるみたいだ。
……って、なんてこと考えてるんだ、俺。
自分の思考が恥ずかしくなり、煩悩を振り払い脱衣所を出た。
おそらくリビングに繋がっているであろうドアをそーっと開けると、首にタオルをかけて、白のロングTシャツにジャージをはいた大泉くんが、ソファに座ってテレビを眺めていた。
部屋着でもさまになるな…。
思わず見とれてしまったがはっと我に返り、リビングに足を踏み入れる。
「あ、あの、大泉くん」
「…ん、あぁ、あがった?」
「うん。……お風呂と、あと服も、ありがとう」
「いいって。さーてと、俺も軽くシャワー浴びてくるから、適当にくつろいでてよ」
大泉くんはそう言って俺の横を通り過ぎようとしたが、目の前でぴたっと足を止め、顔を覗き込んできた。
いつもより顔が近くにあって、顔に熱が集まっていくのがわかる。
「氷室、もしかして、泣いた?」
「!」
「目、赤くなってる」
大泉くんの指が、俺の目元をすりすりと撫でる。
そりゃそうだ、さっきまで泣いてたんだから、赤くなっててもおかしくない。
思わずぱっと顔を逸らす。
「大丈夫、泣いてなんかないよ……ちょっと目を擦りすぎちゃっただけで」
「でも……」
「ほ、ほら、大泉くんもシャワー浴びてきなよ!からだ冷えてるし、風邪ひいちゃったら大変だし!」
俺は大泉くんの背中を押し、強引に脱衣所に押し込んだ。
泣いていたことを知られるのが嫌だった。
かっこ悪いし何より、大泉くんが好きで、失恋して泣いたなんて。
俺はひとつため息をつき、とりあえずリビングに入った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
29 / 36