アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
彼の顔にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
彼の顔
-
大泉side
日曜日、成瀬吾郎さんの握手会&サイン会当日。
初めて氷室とお出かけできると、ずっとずっと楽しみにしていた、柄にもなく浮かれていたし。
これでもっと氷室と距離が縮まればいいなと思っていた、けれど…。
待ち合わせ場所に来たのは、氷室ではなく祥子だった。
氷室が快くチケットを譲ってくれたと言っていたが、おそらく何かしら言ってチケットを奪ったのだろう。
改めてハッキリ、祥子とはもう付き合わないと言い残し、氷室に電話をかけた、メールもした。
でも、氷室からの連絡はなかった。
家の場所も知らないから訪ねることもできない。
仕方がないから、次の日早めに学校に行って下駄箱の前で氷室を待ち伏せた。
登校してきた彼を校舎裏まで連れて行き、祥子に何か言われたんだと思って問いただした。
けれど、氷室は頑なに自分の意思だと、そう言って真実を話してはくれなかった。
俺は何だか悲しくなって、氷室と別れて教室に行った、授業が始まっても氷室は来なかった。
その日の学校は全然楽しくなくて、友達に話しかけられても素っ気ない返事ばかりしてしまった。
けれど昼休みの終わり際、隣のクラスでこの前氷室にクッキーを渡していた多宮蓮華が俺の元にやって来て、まだ彼が校舎裏にいたことと、早く仲直りしてほしいという趣旨のことを言った。
辛そうな彼を見たくないと、彼女は言った。
そんなの、俺だって見たくない、氷室には笑っていてほしい。
俺の手で、もっと笑わせてやりたい。
……今朝の、泣きそうな氷室の顔が、頭から離れなかった。
でも、笑わせてやりたいなんて思っていながら、俺があんな表情させたんだよな。
ふと窓の外を見ると、激しめの雨が降り始めていた。
気が付いた時には、俺は雨の中を全力で走っていた。
そしていつも本を買っている本屋の軒下で氷室が祥子に責め立てられているのを見つけて、咄嗟に家に氷室を連れてきた、というわけである。
あたたかいシャワーを浴びながら、さっきの氷室の姿を思い出す。
濡れた髪、風呂上がり故に上気した肌。
直視するのがキツかった。
氷室が俺の服を着ているというのもかなりきた、サイズが合わなくて少しダボッとしてるのも。
いや正直、氷室が雨に濡れているのを見つけた時からやばかった。
白いシャツが雨のせいで肌に張り付いて、いろいろその、透けていて……。
頭を振って煩悩を散らし、まずは氷室と話さなければと思い直し、さっさとシャンプーやらを済ませ風呂を出た。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
30 / 36