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本心と想いにしおりをはさみました!
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本心と想い
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思わず、逃げてきてしまった。
あれから全速力で走って学校から少し離れた公園まできた。
いつもは子どもで賑わっているここも、日が傾きかけているためかほとんど子どもがいない。
が、今の俺にとっては好都合だ。
ため息をついてブランコに腰かける。
……久し振りにブランコ乗った気がする。
そりゃ、ブランコなんてそうそう乗らない。
公園で足を止めることがまずないからな。
もう一度ため息をついて空を見上げた。
さっきまでオレンジ色だった空が、もう黒くなりかけている。
街灯にも明かりがついた。
………帰ろ。
そう思ってブランコから立ち上がり、公園から出ようと歩き出した。
ふと前を見ると、街灯の近くに誰かが立っていた。
その立ち姿に見覚えがありすぎて、激しく焦る。
思わず立ち止まった。
どうして君は………君は……。
「氷室」
「……大泉、くん」
大泉くんは俺に近付くことなく、でも真っ直ぐ俺を見つめていた。
「教えてくれ」
「……?」
「俺のこと、好きか?」
「………」
「話して間もない俺にこんなこと聞かれるのは嫌かも知れないけど、でも教えてほしい」
「…………」
きっとここで俺が「嫌い」と答えても、彼はそれを笑って受け入れてくれるのだろう。
そうか、なら仕方ないなって、いつもと変わらない笑顔を向けてくれる。
その方が、もう彼を傷付けないですむのだろう。
実際俺は、それを望んでいた。
でも……いざとなったら「嫌い」なんて言葉、言えるわけもなかった。
俺は泣きながら、「好き」だと伝えた。
たくさんの意味を込めて、たくさんの想いを込めて……。
「じゃあどうして、避けたりするんだ?」
「……他のクラスの女の子たちが、言ってたんだ。大泉くんが俺と一緒にいたら、大泉くんのイメージダウンするって……。俺、それが嫌だから、だから………」
「……俺は、世間体とかイメージとか気にして人と接してる訳じゃない」
大泉くんは俺に近付き、お互いの表情が認識出来る距離で止まった。
と言っても、周りは暗いため、ちょっと近い。
「俺はね、その人と一緒にいたいからいるんだ。話したいから話すんだ。……俺も、氷室が好きだから、こうやって話もしたいし隣にいたいって思うんだよ」
その言葉を聞いて、余計に涙が溢れた。
今までそんなことを言ってくれる人はいなかった。
俺の周りは幼馴染みしかいなかったから、そんな風に言ってくれる友達はひとりもいなくて、でも寂しいとか思ったこともなくて。
大泉くんと出会って、少し仲良くなって………近くに大泉くんがいないと寂しいと思うようになったのは初めてで……。
その本人に、一緒にいたいと言われるのって、こんなにも嬉しい事なんだと初めて気が付いた。
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