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性別と感情にしおりをはさみました!
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性別と感情
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差し出された彼女の手に、鞄にしまっておいたチケットを置く。
満足そうに笑った彼女を見て、悔しさが胸の中にたまった。
「じゃあ、私は行くわね」
「…………」
去っていく彼女の背中を見つめみえなくなったところで、俺はようやく動かなかった足を動かし家に入った。
「……はぁ…」
俺はひとり、校舎裏の壁に寄りかかり座っていた。
大泉くんは、俺が何も話す気がないと分かって、『困らせてごめん』とだけ言い残して去って行った。
謝らなければならないのは、俺の方なのに…。
もうとっくにチャイムは鳴って、授業も始まっている。
このまま帰ることも考えたが、どうも動く気が起きずずっと座り込んでいた。
どうせ誰も来ないだろうし。
ボーッとしているうちに、昨日眠れなかったからか今になって眠気がおそってきて、俺はそれにあらがうことなく意識を手放した。
誰かの声と、からだを揺さぶられる感覚で目が覚めた。
「あ、起きた、よかったぁ。氷室くん、風邪引いちゃうよ?」
顔を上げると、心配そうに俺の顔をのぞきこんでくる多宮さんがいた。
「た、みや、さん…?」
「あ、う、うん!」
「何でこんなとこに…」
「今お昼休みで……」
「昼!?」
その言葉を聞いて、一気に目が覚めた。
俺はこんなところで何時間寝てたんだ。
「う、うん。ここにね、仔猫がいるの」
「仔猫?」
「そう。あ、ほら」
多宮さんのゆびさした方を目で追うと、白い小さな猫が、こちらにとことこと歩いて来ていた。
「この子ここに迷いこんじゃって。たまたま見つけて、毎日餌あげに来てるんだ。お家も、作ってあげたの」
多宮さんの膝に乗ってきた猫が、彼女に手にすりよっていた。
か、かわいい。
「すごいね、多宮さん」
「え、そう、かな?」
恥ずかしそうに笑った彼女は、とても可憐でふわっとしてた。
…………俺も、女の子だったら、少しは違っていたのかな。
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