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兆候-14にしおりをはさみました!
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兆候-14
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引き摺るような足取りで自分の席に向かう。机の横には、ほとんど中身の入っていない薄っぺらい鞄が提がっている。
中には携帯がちゃんと入っていた。
(早退する時に一緒に持って行けば良かった……)
そうしたらわざわざ学校に戻ってくる必要などなかったのに。無駄な労力を使ってしまった。
「……」
大河の他に誰もいない、孤独な教室。
昔から一人が好きだった。仲間など必要ないと、近づいてきた輩は全て突っぱねたし、自分からも接近しなかった。大河のような不良のうちで仲間とつるんでいる奴は目障りでしかなく、片っ端から潰していたような気がする。そして、周囲から誰もいなくなった。
自らそうしたのだから、何も思うところはない。今も一人が好きだし、これからも独りを好むのだと思う。慣れた環境は急には変えられない。
畏怖の視線を向けられるのは構わない。しかし、おかしなものを見るような視線は堪えられない。
先程のクラスメイトは言った。大河は変だと。
変じゃない。自分は普通だ。いつも通りだ。異常な箇所は一つもない。ない筈だ。
「……もう六時かよ」
黒板の上の時計の針は、最後に見た時から大分進んでいる。大河は鞄を手に教室を出ようとした。
すぐに足を止めた。
いや。驚きで動かせなくなった。
それを見た瞬間、身体が硬直した。恐怖というよりも、純粋な驚きでだ。
「なん、で……お前――」
教室の戸口に、犬飼が立っていた。
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