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男娼が知る現実にしおりをはさみました!
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男娼が知る現実
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世の中は基本的に金だ。最終的には大抵のものが金で買えてしまう。
それを陽が思い知ったのは大分幼い頃の話だった。この通りの珍しい容姿は、黒髪黒目の多い日本では大分浮いてしまう。
「あんたのせいで……!」
母親にそう言われ、出て行かれた。理由は後で分かった。
母はもう何年も不貞を疑われたのだ。あまりにもかけ離れた容姿の子供だったから。
そんな状況が続けば人は疲弊する。結果として、両親は離婚した。そして母親が出て行ったのだ。
しかし、子供が生きていくにはこの世は厳しすぎた。しかし、育児放棄で母親に警察の手が及ぶ事は避けたかった。全ては母の不貞を疑った親族が悪いのだから。
「何か、あったのか?」
幼馴染はそんな時に、空気も読まず話しかけて来た。大きなお世話だと嫌がっても、手を強引に引いて自分の家に連れて行った。
「あらまあ、陽ちゃん」
「いらっしゃい、陽君」
影宗の両親は優しかった。恩人と言うべき人間だった。
鼻つまみ者になるか、芸術品の扱いを受けるか。どちらであっても、陽はずっと一線を引かれ続ける存在だった。
これが一度きりの機会であったとしても、陽にとっては一生抱えても構わない程の出来事だった。
金銭面で困った時、真っ先に体を売る事を考えた。これが一番金が手に入る事だけは、分かっていたからだ。
「うちに来るかい?」
いざ体を売ろうとしても、踏ん切りはなかなかつかなかった。
立ち往生していた所を拾ってくれた“Karma”のマスターはそう言った。生きるのに必要な事はおおよそ手に入るからと。
ただし、Karmaはただのバーだった。そういう接客はしていない。
だからマスターは抜け道を作った。客として訪れたのであれば、その後の事は自己責任だ。もし何か問題があったとしても、マスターやKarmaには関係ない。
その上でマスターは、念には念を入れて陽の身の安全の為にも裏口からの出入りを提案した。
「アタシ……ネコは、嫌よ」
「それでも構わない客はいると思うよ。君に触れたい人間はたくさんいる」
マスターの言葉通り、陽は今では客に困らないほど人気の男娼になり今に至る。
たった一つの誤算以外は思い通りの生活が出来ていた。
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