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綱渡りの線引きーⅡにしおりをはさみました!
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綱渡りの線引きーⅡ
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「何か、理由があったんじゃないかと思って」
「男って、本当に馬鹿よね」
唐突な暴言に影宗は目を丸くした。陽の顔を見ると、影宗を真っすぐに見ていた。
「知らなきゃ知らないで、変な想像して理由探して。アンタは特に、アタシの事を客よりも知ってるから想像してしまうんでしょうけど」
「確かに」
「でもアタシ、ただただ生きたかっただけよ。男娼の方が金が良いと思っただけ。そこに大した理由はないわ。そんなに考えられる脳があったなら、アタシはこんな道選んでいなかった。断言するわね」
理由はない。予想外の答えに影宗は唖然として陽を見ていた。
だが、すぐに別の疑念が沸き上がった。今の状況は、おかしい。理由が無いと言うにはあまりにも理解出来ない。
「じゃあ、俺との同居は。今のこの状況は……」
「アンタが追いかけて来たんじゃない。アタシを見つけて、追って来て。進学辞めて、店に入っちゃって。今じゃエースじゃないの」
「っ、だから!俺の独りよがりじゃ」
噛みつくように吐き出した影宗の言葉に、陽は笑った。
線引き。陽にとっての線引きとは、ある言葉だけは口にしない事。
言葉は証拠になる。言葉だけで、ありもしない想像を生み出す。
「アンタ、アタシとの「夜」がバレたらどうなるか知ってる?」
「え?……お前の営業の邪魔になる、よな」
「それだけじゃないわよ。マスターはアタシ達の事を認めざるを得ないの。もし、アタシや環の事で問題になっても、今は無関係だと言い張れるわ。でも、アタシとアンタが唯の幼馴染じゃなかったら疑われるのよ。そういう店だってね」
想像もしなかったのか、影宗は顔を引きつらせていた。何も考えずに追いかけて来ただけはあると陽は呆れた。ある意味で感心もした。
「それでも、アタシはアンタを手放したくはないのよ。アンタの欲しい言葉が一つも言えないと分かっていてもね」
「え?」
「アンタがアタシを追いかけてきたことに、理由はあるの?」
影宗は陽を見つけたその日の事を思い出した。大学の時に新歓の飲み会に誘われて、会場近くで陽を見た。
いつの間にか姿を見なくなった幼馴染が、綺麗に着飾って男と一緒に居た。親しげに。
何をしているのかはすぐに分かった。だから、居ても立ってもいられなかった。
次の日に同じ場所で待っていれば、陽が来た。声を掛けて、強引にKarmaを紹介してもらった。
きっと、これが恋だと呼ぶのだと今思った。
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