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5月11日(月) 純血種にしおりをはさみました!
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5月11日(月) 純血種
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月曜日。
全くついて行けない授業を受け、放課後。
「ひぃーー」
疲れた。板書だけで腱鞘炎になりそうだ。
「変な声出すなよ高原」
後ろの席で、仙座が笑う。
「疲れた…」
「俺、今から部活ー」
仙座はさっさと荷物をまとめて教室を出て行った。
「元気すぎだろ」
ぼやきながら、僕も荷物を背負う。
「寮に帰るの?柊」
廊下に出る直前、雛貴に声をかけられた。
「今日はちょっと、生徒会室に…」
「生徒会室?」
雛貴は首をかしげたが、すぐに納得したような顔になる。
「お兄さんのところ?」
「ああ」
頷いて、雛貴とは別の方向へ歩き出した。
階段を降りて、三年の教室前を通り過ぎる。
周りの視線は、もちろん僕に向いた。
生徒会長と同じ髪の色をした、下級生。
珍しそうにしながら、疑念や敵意も感じる。
お世辞にも、気分が良くなるような視線ではなかった。
「……」
生徒会室と札のかかった部屋の前。
扉を叩き、ガラリと開ける。
「───柊?」
目の前には低めのテーブル。
それを挟むように、3人掛けのソファーがふたつ。
右側のソファーに、黒い髪の生徒がひとり座っている。
窓際には少し仰々しい机と、オフィス仕様の一人掛けソファー。
怜はそこに座っていた。
「学校生活には慣れたか?」
いつも通りの穏やかな顔で、僕に話しかけてくる。
「…聞きたいことがある」
僕は後手で扉を閉めて、手前のソファーに座る生徒を一瞥した。
「なんだ?」
「怜と二人で話がしたい」
そう言うと、怜はしばらく考えてから頷く。
「時雨(しぐれ)のことは気にしなくていい、ここで話せ」
「え…」
この人、時雨っていうんだ…ってか、話していいのか?
「おまえが聞きたいことはだいたい分かってる」
怜は意味深に口角を持ち上げた。
「ユキだろ」
「……」
"ユキ"という呼び方をしているのは、おそらく雪町のこと。
そう呼ぶくらいには親しい、ということだろうか。
「…教えてくれ、雪町のこと。吸血鬼のこと」
僕はまっすぐに怜を見た。
「吸血鬼は、この学校で人間との共存を学んでいるだけだ」
怜は用意されていたような答えを即座に返してくる。
「彼らは定期的に血を吸わないと、飢えて自我をなくす」
「それで、人を襲うのか」
「厳重注意はしてる」
それが生徒会の仕事だからな、と怜は続けた。
「輸血パックを飲んで生活しているが、それでは満足できない種族もある」
「種族…?」
何の話だ、よく分からなくなってきた。
「純血種と呼ばれる種族だ」
「じゅん、けつ…?」
「先祖の代から人間と交わらずにその血を受け継いできた種族」
「…??」
「純血に近い種族も、たまに生き血を欲するけどな」
───先祖?人間と交わる?
「ユキはその純血種。ユキは輸血パックなんかじゃ全然物足りないんだ」
「ちょ、待って、訳わからん」
というか、どれだけ説明されてもきっと理解できないだろう。
「簡単に言うと、おまえはユキに血を与えてやればいい」
「なるほど…」
…雪町に僕の血をあげればいいんだな。
「分かったか?」
「あぁ」
僕はこくりと頷いた。
「また何かあったらいつでも来い」
「ありがとう、怜」
すっきりした気分で、僕は生徒会室を出る。
…雪町、部屋にいるかな。
軽い足取りで、寮への道を急いだ。
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