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超能力編〜開始直前〜にしおりをはさみました!
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超能力編〜開始直前〜
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夕暮れ時の教室、僕は好きな人と2人でしゃべっていた。
ただ他愛もないことをしゃべっているだけなのに、こんなにも心が温まるのは、僕と彼がついさっき恋人同士になったからだろう。
僕の名前は内藤知真。高校2年生で、物心ついたころから男の子しか好きになれなかった。
それがちょっとおかしいということは十分自覚していて、そんな僕に恋人なんてできるはずないと思っていた。だけどなんとこの度天使のような恋人ができてしまったのだ!
「あの…尚武くん。これからなんて呼べばいいかな…」
僕がもじもじしながらそう話しかけると、尚武くんは優しく微笑んだ。
「なんでもいいよ。尚武くんだと長いし、呼び捨てとか?」
僕の恋人は、水川尚武という名前だ。天使のように優しくて、誰にでも思いやりを持って接していて、自分がよければいいなんて一切考えないし、人の嫌なところを上手く受け止めることのできる、本当にできた人間なのだ。まさに僕にとっての理想の男性。
「で、でも呼び捨ては……じゃあ、しょ、尚ちゃんでもいい?」
「いいよ。呼び捨てくらいで照れちゃうなんて、知真は可愛いね」
「そ、そうかな…」
知真。知真。僕、呼び捨てされた!胸がキュンとする。
『はあ…ほんとかわいい。知真と恋人同士になれるなんて、嬉しいな』
尚ちゃんの心の声が胸に飛びこんできた。
『知真に好きになってもらえて、よかった』
それはこっちの台詞だよお!!
そう言いたくなるのをぐっとこらえて、尚ちゃんを見つめた。
僕は他人の気持ちを知ることのできる超能力を持っている。このことは、誰にも言ったことがない。気持ち悪がられるに決まってるから。
たいていの人は、思ってることと言ってることの間に矛盾がある。本音と建前というやつだ。僕には本音も建前もいっぺんに伝わってしまう。
たまに疲れてしまうけど、辛くなることはあまりない。全ての人に、いいところと悪いところがある。優しい言葉をかけながらひどいことを考えているときもあれば、厳しい言葉をかけながら相手を思いやっているときもある。人とはそういう風にできているものなのだ。僕はそのバランスをちゃんと理解している。
大事なのは、人を傷つける言葉を口に出さないことだ。心の中で考えるのは自由。勝手にのぞいてしまっている僕が悪いのだから。誰しも心の中では黒いことを考えているもの……そう、思っていた。
だけど、尚ちゃんは特別だ。行動と感情の間のズレがほとんどない。本当に心から優しい人間なのだ。だから、尚ちゃんと一緒にいると、僕はすごく癒される。
そんな尚ちゃんになら…いつか打ち明けられるのかもしれない。最初はびっくりするだろうけど、尚ちゃんなら僕を受け入れてくれるかもしれない。
…でもそれは、遠い未来のことだと思っていた。
ドーーン
突然、遠くから大きな音が鳴り響き、地面がぐらぐらと揺れた。
何事かと思って尚ちゃんにしがみつくと、今度はいきなり天井が崩れて…
ドーーーーン
「わっ!いったぁ…」
「知真、大丈夫?」
しりもちをついた僕を尚ちゃんが抱きしめた。
「しょ、尚ちゃん…これなに…?」
僕たちの目の前に、大きな岩が出現していた。どうやらこの岩が、天井を突き破ってきたらしい。
遠くの方からは連続的に大きな音が聞こえている。
「わからない…それより、ケガはない?」
「うん。僕は大丈夫……え?」
岩の裏側から、するりと人が現れた。
その人は無表情に僕と尚ちゃんを眺めている。
不思議なのは、その人の心がまったく読み取れないことだ。こんなこと今までなかった。
心が見えない人はふっと笑って指を鳴らした。
その瞬間、世界は暗転した。
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