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続の続の続 完結~オリジナル少年少女。少年目線にしおりをはさみました!
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続の続の続 完結~オリジナル少年少女。少年目線
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席次一位は卒業式でスピーチだそうで、頭を抱えていたら、瀬尾が両手をタイムの形にした。
ティカル。
毎度お馴染みのファミレス。
あーでもないこーでもないと文案練って、出来上がったのは明け方だった。
「さすがに眠。ここで倒れそうだー」
「だったら」
だったらうち近くだから少し休んでいけ
と
言えたらどんなにいいだろう。
僕はあれからほとんど誰とも付き合ってこなかった。
家は出た。
あの本のことで、母は半狂乱になってしまい、父は僕か母を選ばなくてはならなくなってしまったから。
父も精一杯、社会生活をふつうに送り続けていくことで精一杯だったから。
でもきょう何があっても、彼に会うのは次、卒業式だけだ。
何かするのは当然だと思った。
「うちで少し寝てく?」
声が少し裏がえったけど、瀬尾は屈託なく、
「助かるー」
と言った。
ベッド占領された。
よっぽど疲れていたんだろう。
即熟睡だった。
僕も寝よう。
自分の寝場所を作ろうとしてるとき、それは不意に起きた。
僕はバスルームに走っていったけど、間に合わずに浴槽に吐いた。
他者の寝息。
他者の体温。
僕は…
僕は男でいてはいけない!
気がつくと、かりすのワンピースを着ていた。
春ニットの柔らかな肌触り。
化粧は薄く、おとなしめ。
目にアクセント。
瞬きしにくくなるほどのつけま。
誰かに似てる………
「リエカだよ」
ぎくっと振り向くと、熟睡してるはずの瀬尾が立っていた。
不意にわかった。
瀬尾源治郎。
源二郎でなく源治郎。
ハルだ。
「ハルなんだね」
「ああ。いつ気づいた」
「たったいま」
ハルは笑った。
「鈍いんだか、気づきたくなかったんだか」
「ごめん」
「いいんだ」
「ごめん僕は」
「いいんだ!」
ものすごく強く言ってから、彼はめちゃめちゃ優しい目をした。
いかつい顔に似合わない優しい目。
まなざしは僕を包んでいた。
「かりすはあいつの好きなブランドだった。俺がほめたからあいつ、かりすはばっか着て来やがって」
覚えてる。
誕プレ何がいいってきいたらかりすのTシャツって言われて、手が出ないからシカトしたら、通学鞄でぶたれた。
乱暴で、
わがままで、
ノータリンで、
守ってやれなかった…………………………
*
今はもう、女装しなくても何とかやってけてる。
瀬尾は卒業式には来なかった。
そもそも瀬尾はうちの大学に在籍してすらいなかった。
本を読んで大学の目星をつけ、在籍してるように振る舞ったにすぎなかったのだ。
あの日瀬尾は僕に一言言いたくて来たのだそうだ。
でも孤立してたろ?
つまはじきされる感じには、詳しかったからさ、俺たち。
リエカはいつも言ってたよ。
どんなときものりだけは、あたしを見捨てないんだよってさ。
見捨てたよ。
見捨てたよって泣いた僕を、ハルは泣くに任せてくれた。
今僕はふつうに会社員してる。
時々心が破裂しそうになるときだけ、左の小指にマニキュアを塗る。
リエカが好きだったメタルオレンジ。
おまえが生きててくれる限り、リエカも生きているんだと、ハルは繰り返し言ってくれた。
だから僕は生きる。
明日を。
未来を。
生きる。
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