アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
今はこの愛だけが真実にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
今はこの愛だけが真実
-
「この手紙を読んだら真っ先に焼き捨てて欲しい。これが他人にまわってしまうとどうしようもないのだ。ただこれを読んでいるのは愛するお前であることを想定して書く。」
「私が居なくなってお前の周りはさぞかし騒がしくなっているだろう。お前をメンテナンスできるのは私だけであり私しか居ない。造り方を知っているのは私だけだ。お前の複製なぞ造らせないように私の生涯をかけた研究内容は棄てた。汚い奴等の手で清らかなお前を複製するという権利は全く無い。」
「私がお前を造ったとき、私は嬉しさの余り学会に報告しそうになった。今思えばあれは気が動転しているようにしか思えない。学会に報告すれば清らかなお前の汚れた複製が出来ることは解っていた。同業者は報告しない私を責め立てた。私は悩んだ、お前が汚れた奴等の目に当たってしまう事を。お前は私のものなのだ。私は迷いながら、報告したのはお前でない機械人形だった。」
「私はお前を造り、恋をした。許されないとは知っているのだ、人間が愛をも知らぬ機械人形に恋する事が。最初から馬鹿げていたのだ、私は躊躇いなくお前を学会に報告するつもりがこんなにも悩み、迷った挙げ句報告しなかったのだから。嗚呼、私は狂人なのだと。これを書いている今もお前の仕草を思い出すのだ。」
「お前は私の混乱した心なぞ知らずに後ろを歩き、微笑み、何時も側に居た。私の不純な心持ちなぞお前は全く知らなかっただろう。私はお前を一番に愛し、求めていた。私の醜い独占欲で清らかなお前の素肌に私の『モノ』であるという印をつけた事に後悔しているのだ。清らかなお前を汚してしまった。」
「けれど、お前は私の正義であり、愛であり、希望である。私の救いなのだ。お前が壊れてしまうまで私の正義の姿だ。その手で幾人を助けよ。これは、私が最期にお前に下す唯一の命令である。」
「終わりにしようと思う。さようなら、私の『正義』よ。」
僕の泣けない目からぼたりと溢れ落ちた。枚数の足りない手紙は僕の手に重くのしかかる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 7