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贈り物は誰に?にしおりをはさみました!
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贈り物は誰に?
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「どんな物をお探しですか?」
雄大は男性の前を歩きながら、店内を見渡した。
「えっ〜〜と。。」
「あと、どんな人に贈るか!」
雄大はくるりと男性に振り返り、にっこりと笑った。
男性はびっくりした顔で立ち止まり、迷ったように目を逸らした。
「それをお聞きしといた方が、選ぶ物も違ってきますから。」
興味も混じった質問ではあったが、答えは分かっていると思っていた。
しかし、男性は困ったように顎に手を当てた。
「……。」
「あっ、あの!無理には…」
雄大は焦って首を振った。
「あぁ…いや。確かに贈る相手によるよね。」
男性がころっと笑ったので、雄大はホッとして、つい、
「…彼女じゃないんですか?」と言ってみた。
男性は困ったような笑顔を浮かべて、雄大を見つめた。
「彼女….かな?まだ付き合って2ヶ月なんだ。」
ドキン
雄大の心臓が音を立てた。それは彼女といった彼の顔がまだ困ったままだったからかもしれない。
「じゃ、じゃあまだアツアツですね!」
「アツアツ…かな?俺は彼女のこと好きなんだけど、彼女はどうかな?」
「付き合ってるんですよね?」
「うん…付き合おっかってなったんだけど、、まだ2回くらいしか2人で会ってないんだ。」
(何!?こんな真面目そうで顔もいい人がそんなないがしろにされているのか!?)
雄大は急に男性に同情したくなった。
「どういう出会いで?」
ついつい雄大は言ってしまった。
「合コンで。連絡先交換して、2人きりで会った時、相手から付き合おうって言われて。いい子だし、付き合うことになったんだ。」
雄大は首をひねった。
「お客様は彼女の事、好きなんですよね?」
「うん…彼女、話が上手で、すごく家庭的で、裁縫や編み物も出来て、特に料理が得意だって。煮込みとかを休みの日にしてるって言ってた。だから、何かキッチン用品をあげたら喜ぶかな〜〜って。でも調理器具のコーナーとかは分からないし、入りずらしい、食器とかならいいかなって。」
(だからうちね…)
雄大はフムと考えた。
「ねぇ…」
「あっ、はい?」
雄大は顔を上げた。
「…近くない?」
すぐそこに半笑いの男性の整った顔があった。
(話に夢中になりすぎて、近づきすぎた!)
「す、す、すみません!」
雄大はぴょっこんと離れた。
「あはははっ。」
顔が熱くなり、雄大は顔を上げれなかった。
「じゃ、じゃあ、食器はその人の趣味がありますからね!どんなのが好きなんですか?」
出来るだけお客様の思うものを勧める!それが雄大の接客だった。
「…ちょっとわからないな…」
またも困り顔。
「写メとかないですか?服とか見ればわかるかも。。」
「…写メない…」
「….じゃあ送ってもらってください。」
「えっ!?」
「早くしないと、もうすぐ閉店ですよ。」
「あっ。。」
男性は言われた通り、携帯を出した。
「ほらほら!」
雄大は楽しい気分で焦る男性の横にに張り付いた。
「何て送れば…」
「まず、”お疲れ”でしょう。名前は?」
「ミサ。」
「”友達に自慢したいからミサの写メ見たいから、送ってくれないかな?”ですかね!」
「自慢って…」
多分そういうタイプではないのだろう、男性は恥ずかしそうに小さくなった。
「ほーたーるのひかーり♩」
雄大は歌い出した。
「わかった、わかった。」
男性は諦めたようにメールを送った。
「…….すぐ返事くるタイプですか?」
「…まぁ、結構早い…かな?」
10分経過
2人は携帯を見つめたままだった。
「…来ないですね。」
「まぁ10分しか経ってないし。」
男性は携帯をポケットになおした。
「君だったら何あげる?」
男性は大人っぽい笑顔を浮かべて、雄大から少し離れた。
「えっ…と。」
(あげたことない!)
「君はあげるより、貰う方が似合いそうだね。」
「えっ?」
「可愛くて、人懐こい。ねぇ、君ならこういうの貰って嬉しい?」
男性はそばにあったまあまあお値段のはる花柄の紅茶ポットを手に取った。
「僕は男だから…どうかな?」
雄大は答えに詰まって、えへへっと笑った。
「そうだよね。。ゴメンね。なんか何にも分かってないのに”彼女”なんて…不思議だよね。」
男性の寂しそうな顔に雄大も目を落とした。
「まだ付き合って浅いですから。。みんなそんなもんですよ。それに彼女の事、好きなんでしょう?」
「…うん。。まぁ。」
雄大は男性の脇を小突いた。
「あっ!惚気ですか!?」
「あっははは。そうかも。」
男性はちらりと携帯を取り出し、再びポケットにいれた。
「ありがとう。今日はもう帰るよ。明日また来るよ。」
雄大はうんっと頷いた。
「ちゃんとリサーチして下さいね。」
男性は親指を立てて、店を出て行った。
「ゆーたん、長い接客ね。店長が何度も見に来てたよ。」
西川が自然に雄大にダンボールを渡してきた。
「何の用だろう?」
「クリスマスシフトの事じゃない?ゆーちゃんにラストまで5連チャンで出来るかなって言ってた。」
「ひぇっ!!」
「あっ、店長、こっち来る!」
雄大が言われた方向と逆を向いた時、遠くからさっきの黒いコートの男性が走って来ていた。
男性はまっすぐ雄大に走ってきた。
息を切らした男性ははっーと膝に手をつき、下を向いて、息を吐いた。
「あの…あっ、写メきました?」
雄大が手を伸ばそうとすると男性は首を振って、顔を上げた。
「いや、そうじゃなくて…はぁっはあっ…これ…」
男性は懐から一枚の名刺を出した。
” wz会社 経理総務課
加藤 成康 ”
雄大は顔を上げた。
「また、明日来るから…」
そう言って首を伸ばして、雄大の胸の名札を見た。
「…椿くん。」
「はい…。」
そう言ってまた手を上げて去っていく姿は、まるで恋愛ドラマのワンシーンのようで、雄大はほっーと見送った。
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