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尾行にしおりをはさみました!
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尾行
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子供の看病は、近所に住むお母ちゃんに任せて
出掛ける、という夫の後をコッソリ尾けた。
少し早い足取りは、どことなく浮かれて見える。
―私らと歩くときはもっとやる気ない感じやのに!!
ひっぱたいてやりたい位、ムカッときた。
着ている新しいジャケットは、あの人の絶対選らばなそうな、大きなバックルが付いた短い丈の物だ。
悔しいけど、あの渋いグリーンは、夫によく似合う。
どうやら、浮気相手のファッションセンスは、悪くないらしい。
―ゲイって、みんなそうなんかしら。
とある双子の有名人が、頭を過った。
―髪かて、あんなにして。
本来の癖のまま、少しうねった髪は、以前より伸ばし気味だが、そこに味があるように見える不思議なセットのされ方をしていた。
―アレはたぶん、寝癖のまんまやろうけどな。
俯きがちな顔が、以前より格段に色っぽいように見えるのは、気のせいだろうか?
ドア越しに睨むようにしてみていた夫が、開いたドアの方へと、吸い寄せられるように進んだ。
―えっ!?
まさか、ここで降りるん?
思ってもみなかった駅名に慌てて、階段を駆け上がった。
―あれ?
ドコや!!
必死で辺りを見回して捜したが、それらしい姿はない。
―見失った?
まさか気付かれとった?
でも、そんなん、あり得へんわ。
そうとは思えない、ごく自然な動きに見えていた。
って、ことは…普通に改札を出た?
あんまり来たことない駅やけど、ちょっと出てみよか。
改札を出て、目ぼしい店を外から見てみたが、夫らしい姿はどこにもない。
―やっぱり。
ネオンが光る方を睨んだ時だった。
コートのポケットでスマホが震えて着信を知らせた。
―なんや、お母ちゃんか。
「はい、もしもし?」
「あんたなぁ、そろそろ帰って来てくれんと、私も困るんやけど?」
「あー。ハイハイ!もうちょっとしたらね~。」
適当な事を言って、通話を終える。
冷たい雨の中、ビニール傘をさして、足のむくまま歩き回ってみたが、収穫ゼロ。
ックシュン!
クシャミが1つ出た所で、諦めて帰ることにした。
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