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羨ましい手にしおりをはさみました!
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羨ましい手
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俺が黙りこけているから、一瞬不穏な空気がながれたが、さすが俺の弟は気が利く男だ。
なにか適当にヨシはタツに話をふる。
しばらく、二人だけが会話をしていて、俺はそれに相槌をうつのが精いっぱいだった。
「俺そろそろ帰るわ」
「タツ兄もうかえるの?」
「俺受験生ですけど」
「一日ぐらいいいじゃん」
「その一日が大事なんだよ」
じゃあ。
そういって立ち上がる。
玄関に向かうタツに、ヨシが見送りについていく。
俺も黙りこくってないでなにか言わないと。
そう思ってヨシのあとに続く。
「じゃあね。また来てよ」
ヨシがそういうと、タツが笑ってヨシの頭をくしゃりと撫でた。
電車を降りたとき、タツに頭を撫でられた事を思い出した。
無造作にくしゃりと撫でているけれど、その手は暖かくて、優しい。
まるで大切な宝石を扱うみたいに。
純粋に、ヨシが羨ましかった。
俺はタツとは仲良くない。あの時あたまを撫でてもらえたのは奇跡みたいなもんだ。
「じゃあな」
そう言って玄関に手をかけようとするタツを、引き留めようとタツの袖を掴んだ。
「あ……」
袖を掴んだものの、言葉が出てこなくて一人で焦ってしまう。
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