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毎日毎日変わらない生活
今になって何となく気付いた
ここでの時間は無駄なんじゃないかと
でも、外に出ても同じか・・・
更生ね
みんな更生出来たら刑務所なんていらないね
「翔」
「何?」
「本を読むのも楽しいかもね」
「本?読んだ事無い」
「いろいろな世界観が面白いよ」
「本か・・・」
本は読みたいとも思わなかったし読んでも意味が無いと思っていた
でも、こんなに暇じゃ読んだ方がいいのかもね
図書館に向かい、とりあえず簡単そうな本を選んだ
分厚い本は読めそうにないし難しすぎる
椅子に座り初めて本を開いた
コミックなら好きだけど文字だけか・・・当たり前だけど
隣で楓も本を読んでいた
よくわからない本だった
「う~ん」
「どうしたの?」
「漢字が」
「どれ?」
読めない漢字を見せると楓は教えてくれた
「あらがうだね」
「あらがうか・・・わかった」
読み方は分かったけどいまいち意味は分からなかった
その後も漢字を教えてもらいながら本を読んだ
読み進めて行くうちにだんだん楽しくなった
自分が本の中の主人公になった気分
「そろそろ戻らないと」
「うん」
俺は読みかけの本を借りて房に戻った
そして毎日就寝時間まで本を読んだ
ここに来て今までやらなかった事をやるようになった
例えば服をきちんとたたむ事
細かい掃除
正座
布団をたたむ事
規律
今までの俺にはやった事なんて無かった作業だった
そして勉強
楓に数学とか英語を教えてもらった
最初は全く分からなかったけどわかるようになると勉強が楽しくなった
最初は眠れなかったけど今は眠れる
怯える事も無い
だって楓が傍に居てくれるから
「眠れないの?」
「少し」
「じゃ、毎日こうしてあげる」
そう言って手を握りしめてくれた
そして俺は安心して眠りに落ちた
楽しい夢なんて見た事が無い
毎日嫌な夢ばかり
夢の中でも居場所を探す俺
夢の中でも一人の俺
寂しい・・・本当はすごく寂しいよ
でも、最近の夢は少し違ってた
夢に楓が出て来る事もあった
読んだ本の世界の夢も見た
でも目が覚めればそこには現実があった
願っても夢の中では暮らせない絶望感
この房には楓がいるから静かだけど他の房は違ってた
毎日喧嘩する声がする
そして呻き声
もしかして殴られてる?
誰に?
「またかよ・・・」
隣の房の誰かがそう言った
「あいつは機嫌が悪いと俺達に八つ当たりするからな」
「そうそう、何かと文句をつけてね」
「マジくそだな、逆らうと懲罰だし」
「だよな」
何となく話の内容がわかった
先生と呼んでいる刑務官の数人は暴力的で個人的に気に入らないと文句をつけて暴力をふるうと言う事
そして足音が近付いて来た
みんなは俯いたままじっとしていた
「何だその目は!」
楓・・・・・
「生まれつきなので」
「違うな、その目は反抗的な目だ!しかもお前は殺人未遂を犯した凶悪犯だ」
「気のせいじゃない?」
「出ろ!」
「楓・・・」
でも楓は目で言った
何も言うなと
だけど目の前で殴られてる楓を見る事なんて出来ない
目を閉じて殴られる音だけを聞いていた
その日を境に楓はいろんな刑務官に暴力を振るわれた
でも楓は何も言わずに耐えていた
声も出さずにじっとされるがままに
「楓・・・大丈夫?」
「平気」
「でも・・・」
「あいつら絶対顔は殴らないでしょ?」
「うん」
「ばれないように体を狙うんだ」
「卑怯だよ」
「そうだね・・・でもそういう行為が許されている場所でもあるんだ」
「そんな・・・」
「目撃者がいたとしても誰も言えない、刑期が延びるのを怖がっているから」
「じゃ俺が!」
「駄目!今度は翔が目をつけられてしまう」
「構わないよ、俺もう耐えられないよ・・・楓が殴られるのを見るのが辛いよ」
「翔は優しいね・・・本当はすごくいい子」
「・・・・・・・・・・・」
「安心して、翔が思っているほど俺はダメージは受けていないから」
「楓」
「だから心配しなくてもいい」
「・・・・・・・・・・」
そんな事を言われても心配なんだ
どうして?
・・・・・・・・・・・もしかして俺は楓の事が?
好きなの?・・・・・・・・・・・・・・
「どうしたの?」
「う、ううん・・・昨日読み終わった本すごく面白かった」
「そう」
「俺、ここを出たら本屋さんで仕事がしたいな」
「いいかもね」
「でもこんな俺を雇ってくれるところなんて無いかも」
「誠実に生きていればきっと見つかる」
「そうかな」
「うん」
確かに今までの俺はどうでもいいような生き方をしていた
誰かの為に何かをする事なんて無かったし、興味も無かった
でも今は違う
ここに来たからじゃない
楓に出会ったからなんだ
だから真面目に生きたいと思ったんだ
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