アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
2にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
2
-
「あー……最悪。」
「とんだ嘘つきだ。昨日はアンアンよがってたくせに。」
「ウルセー死ね。」
ここは家から最も近い駅。時刻は10時3分。
大学生である俺は、朝一から講義があった。つまり大遅刻。でも今から急いで行こうなんて微塵も思わない。
何故って、もちろん腰が痛いから。というより全身が痛い。
そうなった原因は、隣を歩いているこの男。
まあ俺も同意したわけだし、責任を押し付けるつもりはないけれど。
目覚めたのは、3駅先の街にあるラブホ。
経験したことの無い痛みに悲鳴を上げたのが約一時間前。
軽く呻いた後、首だけを動かすと、真横に綺麗な男の寝顔があった。
あぁ、コイツが昨日ヤった相手ね。
俺の処女をくれてやった奴。
見てくれはマトモだけど、俺のことを何の抵抗も無く掘るあたり、相当なイカレ野郎だと思う。
これが、"正常"な時の俺の、コイツの評価。
「ま、なんでもいいけど。アンタ才能あるよ。」
「才能ってなんだよ。」
「何って、"オンナノコ"の才能に決まってんだろ。」
これで可愛げがあればな、なんて呟くこの男は、俺と同じ大学に通う二年。
伊織 遙(イオリ ヨウ)という名前しか知らない。ああ、あと、人を蔑んだような表情がよく似合う。
昨日の夜、バイトの帰り。
サークルか何か知らないが、大学の付き合いで呑んでいたらしいヨウを偶然発見。
俺はヨウのことを知っていた。
顔が良いことで有名で一年の頃から女子がうるさかったからな。
特に愛想が良い訳でもないのだが、周囲は騒ぐ、騒ぐ。
整いすぎたその顔はまるで人形だ。
だから、冷たさを感じる。滅多に笑わないから特に。
否、それは顔の綺麗さ故だけではないかもしれない。
コイツの、目。
まるで何にも興味を持っていないような、どこを見ているのかもよく分からない目。
冷やかで、蔑まれているようで、見つめられると心臓に悪い。
目が合えば、きっとすぐに逸らしたくなるだろう。そう思っていた。
けれど実際はそうじゃない。離せなくなるのだ。
惹き付けられたら最後、吸い込まれていくような感覚に陥り、そのままコイツの体内に入り込んで、ドロドロに溶かされているような気になる。
ちなみにこれ実体験な。ソースは俺。
とまあそんな話は置いといて。
つまり俺が一方的に知っていただけで、ヨウを見かけた時、言葉を交わすこともなくすれ違っただけだった。
──────────
さっさと家に帰ろうと駅の方向に早足で歩いていると、いきなり背後から肩を掴まれた。
俺は人が背後にいるのが嫌いだ。とても。
自分の後ろに人の気配があるだけで、背筋をゾワゾワと何かが駆け上がってくる。
体を捻り、肩に置かれた手を叩き、肩を掴んだ野郎を睨み殺してやる、くらいの勢いで見上げた。
その相手というのはまさかのまさか、キャンパス一のモテ男くんで、あの恐ろしい瞳の持ち主。少し前にすれ違った人。
目を見つめてしまった時点で俺の完全敗北。
怖い。恐い。コワイ。こわい。だけどその瞳は俺を魅了した。
「先輩、この後コイツと約束してたんで帰りますね。みんなもまた。」
ヨウの発言で現実に戻ってきた。息をすることも忘れていて、喉からヒュっと音がした。
「なぁんだよー、仕方ねぇなぁ。今度は最後まで付き合えよぉ。」
語尾がおかしなくらい伸ばされていて、ヨウが先輩と呼んだ男はかなり酔っているらしい。
他の奴らからも若干文句を言われていて、コイツがみんなから人気だということが分かる。
いや、元から知ってたけどな。
約束なんて覚えがないが、その場は黙ってヨウに合わせた。
酔っ払い集団と別れて、二軒目に付き合わされるのが面倒だったから声をかけた、という説明と謝罪を受けた。
まあ、そうだろうな。コイツのことだから、皆から構い倒されていたに違いない。
「びっくりするだろ。俺を巻き込むな。」
「ごめん。同じ大学の奴って知ってたからつい。」
この発言には心底驚いた。
ヨウとは学部も、そして学科さえも違う。
ヨウみたく目立つ外見でもないから、周りが騒ぐこともない。
成績だって並だし、秀でたところは特に思いつかない。
それだけじゃない。
コイツ、何にも興味が無さそうだから。親しくもない人のことを覚えているのがとても意外だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 112