アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
776にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
776
-
鋭い目、低い声で威嚇してきたとしても俺が怯むことはない。
「残念だったなぁ、あーゆ君。そんなに一緒に風呂に入りたかったのか……俺と」
揶揄した俺に、歩の眉は最大限に釣り上がる。これのどこが何を考えてるかわからない…なのだろう。打てば打つほど反応する可愛らしい子だ。
そんな歩の怒りは収まらないらしい。
「てめぇじゃねぇよ!!誰がお前なんかと入るか変態」
「一緒に風呂に入りたいで即起きしたお前の方が変態だと思うのは俺だけかな?」
「それは…っ、別にお前には関係ない」
言い返そうとした歩が黙る。
うちの弟は、周りが聞き耳を立てていることを気づかないほどバカじゃない。俺たちが学校で、しかも人前でプライベートな会話をすることは変だ。
震えるほど怒っていてもどこか冷静でいられるようになった歩を見て思う。
こうやって知らないうちに成長し、いつか兄を追い越してしまうのが弟なのかもしれない。それを近くで見守るこことが出来る俺は幸せ者だ。
けれど。
「学校で息荒く盛ってんじゃねぇよ、おバカな子牛ちゃん。ここは盛る所でも寝る所でもない、勉強する場所だ」
そんな簡単に追い越されてたまるか。
兄としてのプライドを隠し、教師として真っ当な説教をしてやる。歩は悔しそうに顔を歪めながらも言い返せない。
憧れには手を伸ばしてもなかなか届かない。だからこそ成長出来る。こいつにとって、いつまでもそんな存在でいたい。
まだ残っている身長差。それを見上げ睨みつけていた歩がため息をつき椅子に座り込む。
面白くなさそうに肘をついてそっぽを向いてしまった。
「んだよ…どうせお前が探してんのは慧だろ。俺からかう必要ねぇじゃん」
「聡いね、歩君。うちのウサギちゃんの居場所どこ?」
「知らない」
口止めされているのか、なかなか歩は白状しない。知らない、見てない、俺は関係ないではぐらかそうとする。
ここまで徹底的に避けられると心配を通り越して静かな怒りが湧いてくる。それはふつふつと控えめながらも確実に温度を増し、やがて破裂する。
「歩」
俺は歩の名前を呼び、明後日の方向を向いてる金色の頭を鷲掴んだ。強引にこちらを向かせ、目線を合わせる。
「吐け。今の俺は二度目は無い」
「あに……獅子原、その目…マジやばい」
「だろうな。なんなら、お前も体験してみる?怒った俺がナニをするのか」
目を見開いた歩が首を振った。それはまるで油の切れたロボットのようだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
776 / 1234