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「慧が俺に惹かれていってるのなんてわかってたよ。
それが嬉しくて調子に乗った。もう止められなくなって逃げるしか出来なかった」
「ちゃんと話せばウサギちゃんならわかってくれるだろう?」
桃がここまで強く言って出るのは、それだけ俺と慧を心配してくれてるからだとわかっている。
それでも踏み出せない俺はとても弱い。
「考えてもみろよ。俺を好きだと言う目が一瞬にして俺を嫌悪の対象として見るんだぞ?
俺の名前を呼んでた唇が俺を拒む……そんなの絶対に耐えられない」
「リカ……」
「俺は慧に見捨てられるのが怖い。全てを知った後、見放されるのが怖いんだよ」
あの目で、あの声で、お前なんて消えてしまえと言われたら俺はどうなるだろうか。
俺にだけ見せる慧の穏やかな顔。拗ねた時の幼い仕草。
照れ混じりに強がるところ。本当は寂しいのに言葉にできない不器用なところ。
どんな時だって1分1秒が大切で、このまま時間が止まればいいのにと願わなかった日はない。
「俺は慧に拒絶されたら生きていけない」
それならば嫌われる前に離れたらいい。
憎悪の目で見られるよりも、その方がいい。見放されるよりずっといい。
それが俺の導き出した答え。
最後まで身勝手な独りよがりでしかない。
触れて、キスをして、1つになって。
初めは固く閉ざされていた慧の心が開いていく。
俺だけに見せる表情や、不器用に甘えてくるところにどんどん溺れていく自分に気づいた。
俺に染まっていく慧に言いようのない満足と、それと同時に失う怖さを知った。
「リカ。ウサギちゃんはあんたが思ってるより強くて弱い。あんたを必要としてる」
「俺じゃ駄目なんだよ」
「本当はわかってるんだろ?お前じゃ駄目なんかじゃない。お前じゃなきゃ駄目だって」
「……それが駄目なんだって」
必要とされているのはわかっている。
慧にとって自分が特別な存在なのも痛い程わかっている。
依存にも近い強すぎる気持ち。
俺と慧はどこか似ていて、少し違う。だからこそ俺と慧はお互いに惹かれあったんだと思う。
奪った者と奪われた者が惹かれ合う。
なんて安いドラマのシナリオだろう。
けれど、それが現実となった時…残酷すぎるほど重くのしかかるんだ。
「駄目駄目うるさい!!腹括りなさいよ獅子原理佳!
あんた今の自分の顔見てみなさい。男前が台無しよ!」
壁一枚隔てた先で君は今、何をしているんだろうか。
夕飯はまたカップ麺じゃねぇよな?
今日はちゃんと眠れる?
寒がりな君は風邪をひかないだろうか。
暖めてやりたい。
抱きしめてやりたい。
朝、1番に『おはよう』と笑いあいたい。
どんな時も考えるのは君のことばかりだ。
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