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459
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その日の夜、リカちゃんはやっぱり電話をくれた。
けれど疲れているのか忙しいのか、あっさりと切ってしまった。
真っ黒になった液晶画面が寂しい…なんて言えないのが俺。
フォルダを開けばそこには目を閉じ緩く笑うあいつがいる。
触れても温かくないし声をかけても返事はくれない。
写メなんだから当たり前なのに、それが寂しさを倍増させる。
なんだか虚しくなってスマホをベッドへ放る。けれど、もしかしたらまた電話がくるかもしれないと思って取りに行く。
今まで当たり前にあったものが無くなる…って怖い。
次にリカちゃんに会った時、昔のリカちゃんに戻っていたらどうしよう。
なぜだかそんな考えが頭を支配した。
ここで1人考えても仕方ない。
何か飲むかとキッチンへ向かえば、ちょうど帰って来た恒兄ちゃんと鉢合わせた。
「まだ起きていたのか」
「11時にもなってないから」
「そうか。慧はもう高校生だったな」
重たいため息をついた後、恒兄ちゃんが俺を見る。
その顔には疲れがありありと出ていた。
「仕事忙しいの?」
「今ちょっとな…どうやら明日も遅くなりそう」
明日は確か父さんと会う予定だったはず。
遅くなるならドタキャンってことだろう。
会いたくなかったから正直ホッとした。
「慧。お前明後日の予定は?」
「無い…けど」
リカちゃんが帰ってくるのは3日後だ。
特に予定の無い俺は素直に答える。
そしてすぐに、なんでこういう時だけ素直になったんだ…と後悔する。
「それなら明後日の昼にでも食事に行こう。
昼なら社長も時間をとれるから」
「え、いいよ。忙しいならそこまでしなくても」
「せっかく家族揃ったんだからいいだろ。退屈なら何か映画でも用意するか?」
そんな気遣いは一切いらない。
けれど恒兄ちゃんはどんどん話を進め、俺を置いていく。
まるでそれが正解のように。
俺と父さんの気まずさを知っているくせに。
「慧。社長の気持ちも少しはわかってやってほしい」
どうやって俺を見放したやつの気持ちをわかれっていうんだ?
俺を見ることもせず「好きにしろ」なんて言うやつをわかれ…だと?
ありえない。
わからないし、わかりたくもない。
ただ、わかることは…ここに俺の味方はいないってことだけだ。
「勝手にすれば。毎月金貰ってんだから飯ぐらい行ってやるよ」
そう答えた俺の声は、自分の声とは思えないぐらい冷たく何の感情もこもっていない。
リカちゃんと出会ってからこんな声を出すことはなかったのに…。
見えないところで変わっていた。
けれど俺は今の俺が好きだ。
リカちゃんが好きだと言ってくれることで自信が出てきていることに気づく。
それはリカちゃんだからなのか、それとも先生だからなのか。
どっちなんだろう。
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