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2の4にしおりをはさみました!
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2の4
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なんだか、今日の二條は機嫌がいい。部活が始まってから、はあ?が一度も出ていない。あれかな、花道がよっぽど好きなのか。
「薔薇って存在感すげえな…、初めて触った気がする。」
二條が左隣で言うから、俺も自分の手の中にある薔薇をまじまじと見た。確かにな。
「そうだよねぇ。バラもだけど、花自体あんまり触ったことなかったよ。バラってこんな匂いなんだ…なんかバラの香りの芳香剤とは違う。」
右隣の一ノ宮は、薔薇を持ってくんくん匂いを嗅いだ。俺もつられて、思わずくんくんした。確かに、芳香剤とは違うな。ほんのり甘い緑の香りがする。
「至、案外この部活は正解だったな。どこかに必ず入部しないといけない決まりなら、ここがお前に合ってる。あの悪魔も、たまには良い行いをするんだな。」
ん、悪魔?なんか、この言葉を聞くの二回目だ。そういや、一ノ宮が入部を希望したからとかなんとか部長と副部長が勧誘の時に言ってたな。
この高校は帰宅部が認められていない。入学してから一ヶ月の間にどこかに所属を決めないと駄目なんだ。だから、幽霊部員を多数抱えた実質的な活動人数の少ない部活も存在してる。俺もそうしようと思ってた一人。
でも、花道部の全部員数は八人で、俺以外はみんな真面目にこつこつと活動してた。そう考えると、この部活の出席率は凄く高い。
「うん。俺は好きだな花道部。ぶんちゃんは?」
笑顔で尋ねてくる。好き…とか考えてなかった。二條に無理に入部させられた感が強かったし。でも、初めて生けた時は…楽しいって思った。今日も、正直嫌じゃない。いや、前回よりも楽しい…かも。これが、好きってことか?
「…まあ、そう…かな。」
「だろ。文は、やらず嫌いだな。体験入部の時も途中から乗り気で楽しんでたから、気に入ったんだろうって思ってた。強引にでも入れて正解だったな。そうでもしなきゃ入部しそうもないもんな。」
「え!」
乗り気?そうだっけ、そんなだったっけ?自分じゃ分かんない。
「で、ほーちゃんは?」
一ノ宮が上半身をテーブルに乗り出して、窺うように俺の隣の二條を見た。
「俺は、…至が楽しいなら楽しいさ。」
「そっか。」
一ノ宮は直ぐに引っ込んだ。お、カップルっぽい会話。照れてんのか、一ノ宮。
ちょっとにやけた気分で一ノ宮を見たけど、奴は下を向いて薔薇の棘をはさみで切っている。ん〜、やっぱり俺と場所を代わるべきだ。じゃないと、カップルの会話がはずまない。
「一ノ宮、場所を代わろう。」
邪魔者は退くべきだろ。俺だって、そんくらいの事は気がつく。
「え、どうして?」
顔を上げて不思議そうに言う。
「二條の隣がいいだろ?」
「ぶんちゃんの隣でいいよ。」
あれ?
「はあ?おい、文。俺の隣が嫌だって言いてえのか。」
不機嫌な声。なんでお前が反応するよ。しかも善意の申し出をさ、悪意と取るのはどうよ。そして、今日初のはあ?をいただきましたが。
「…だって、一ノ宮が隣にいるべきだろ。」
「はあ?別にお前が隣でもいーだろが、」
「……。」
はあ?の威圧感に負ける。前髪の隙間から見える二條の顔が怖い。そっと目をそらす。
なんで?俺は善意のつもりだったのに…。やっぱり、人間関係は俺には難解で難しい。
俺はきっと、二人が優しくしてくれる事が心の底では嬉しかったんだ。だから、自分が出来る事をやってあげたくなったんだろう。柄にもない事をするもんじゃない。
前髪が長くて良かった。口をしっかりと結ぶ。涙が出そうなのをこらえた。
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