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声の限り9にしおりをはさみました!
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声の限り9
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指差したのは一番後ろの窓側の席だった。
その隣の茶髪の男子が手を振っている。
「二口、色々教えてあげてね」
「ッス」
二口と呼ばれた男子は席に着いた俺に愛想笑いを向けた。
「二口堅治。よろしく」
うん、よろしく。
俺はペコリと頭を下げた。
少しチャラそうな奴だな。
ヤンキーでは無さそうだけど、あまり気が合わないタイプかも。
そう思って席につく。
「何部入んの?」
やばいな。
いきなり声かけられた。
というか、yes/noで答えられる質問でなきゃ困るんだよ。
「俺はバレー部」
助かった。
俺もバレー部って意味を込めて、少し笑って頷く。
「へぇ、そうなんだ。ここ強豪だから、練習ハードだけど大丈夫?…先輩も厳しいし」
嫌味なのか。
それとも素で心配してくれてるのか。
よくわからないけど、先輩が厳しいのは当たり前だし、音駒もそこそこ強豪で練習もハードだ。
…強豪だった、か。
きっと大丈夫。
大好きなバレーだ。
ハードな練習にだってついていけるさ。
俺はまた頷いた。
二口はふーんと俺を見て、「ポジションどこ?」って聞いてきた。
ウィングスパイカーだよ。
言えないけど。
「ちなみに俺はウィングスパイカー」
奇遇だな。
また同じだ。
俺は少し嬉しくなって頷いた。
「お前、ウィングスパイカーなの?ブロックは?得意?」
ブロック?
今度は首を振った。
ブロックよりスパイク、とくにバックアタックが得意だ。
まだ音駒でレギュラーじゃなかったから、それを披露することはなかったけど。
「そうか。ウチ、“鉄壁”って呼ばれるほどブロックに力入れてんの。前いた学校、コミットブロックだったんじゃない?」
ある程度トスを予測して飛ぶコミットブロック。
音駒もこれだった。
というか、ほとんどの学校はコミットブロックだと思う。
トスを見てから飛ぶリードブロックは、リスクが大きいから。
「でもウチは徹底したリードブロックだから」
二口はとびきりの笑顔で言う。
それが少し得意気で可笑しかった。
ヤンキー…では無さそうだ。
それにしても…すごいな。
リードブロックだったら囮にはかからないけど、その分一歩ブロックに出遅れるんだ。
それなのにリードブロックを徹底するってことは、相当動けてでかいやつが揃ってるんだろう。
俺が感心していると、二口は茶色い頭をかいて苦笑した。
「今は、まぁ色々あって揉めてるけどさ、この間インハイ終わったし、もうじき上手くいくと思うんだよね。そしたらさ、福永もバレー楽しくできると思うよ」
…どういう意味だ?
二口の表情が急に暗くなったから、俺は無意識に目を見開いていたらしい。
二口が慌てて取り繕った。
「いや、今のナシ!とりあえず、バレー部入るならよろしく!」
俺は腑に落ちなかったけど、とりあえず頷いた。
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