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見慣れた車。
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少しぼーっとしてたら、時間を告げる電話がかかってきて。
慌てて服を着て慌ててラブホを出た。
ラブホを出て少し歩いたら、見慣れた黒の車が停まっている。
「……伊月!?」
後部座席に座る男が、俺の叫びにゆっくりと目を開ける。
繊細な動きで、まるで睫毛の一本一本がすべて計算され尽くして自ら動かしているような、そんな壊れてしまいそうな動きで。
「……翔太さん、やっと来たんですか…さっさと乗ってください」
目を開けた男は、呆れたようにも聞こえる声で言った。
大人しく乗ると、男…伊月は、運転手に「屋敷に」とだけ言う。
動き出した車のなかはどこか静まり返っている気がして、いたたまれない。
「い、伊月!……運転手、雇ったんだ?」
頬杖をついて外を眺めていた伊月があからさまなため息をつく。
「ええ、翔太さんも私も乗り物酔いしますから。…………そんなことより、火遊びも程々にお願いしますよ。」
ああ、やっぱりここにいたのは偶然じゃなかった。
俺の方を見てやたら真剣な顔つきをした伊月がまた話始める。
「ただの性交渉なら好きにやってて下さい、それは貴方を強いと思わせることもできます。…ですが、今回相手は子供、しかも男。……この意味がわかりますか?」
よく通る澄んだ声の伊月はその分怒ると怖い。
……今は、怒っているときの声だ。
「いやー……俺も記憶ないっていうか…」
「尚更ダメでしょう?もっと自覚を持ってください、組長」
遮るように言われた言葉と最後の呼び名。
俺にとっては、死ぬまで解けない呪いみたいな呼び名だ。
「はは…組長って呼び方すきじゃないんだけど…」
苦笑いって、こういうときにまさに使うべきだと思うんだ。
自分でもわかる乾いた笑い声が逆にどこか可笑しい。
「いえ、貴方は間違いなく組長です。そんな虫も殺せなそうなお顔立ちでありながら実に美しい殺し方をなさる……まさに、組長の名に相応しい。」
珍しく伊月に褒められたけど、なにも嬉しくなかった。
そうだ、俺は………、
極道の、組長なんだ。
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