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嘘
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料理長の表情が陰り、あまり聞いたことが無いような覇気の無い声でそう続けた。
「…具体的には、言わないでくださいよ」
「そりゃね。んで、夜見ちゃんが凱史の親になった経緯もそんな感じだったんだけどさ、でもほら、やっぱりどんな理由で生まれても子は子なんだよ」
「…」
料理長の言わんとしている事が、分かりそうで、ぼんやりと霞む。
そんな俺の胸中を察したのか、料理長が改まる様に口を開いた。
「夜見ちゃん、凱史が実験台になるのを死ぬほど嫌がったみたい。
それこそ文字通り、死ぬほど…でも結果は変えられなくて、夜見ちゃん自身も実験台になる事を希望して、だけどそれが許可された頃に丁度凱史の実験が終わって…
ね、嫌だと思うけど想像してみて。
自分の息子が連れていかれて、帰ってきたらつぎはぎだらけになってたって」
子どもなんか居た事は勿論ないけど、そんな俺でも分かるくらい、残酷な仕打ち。
「…酷い、ですね」
「その後が一番ね」
「え?」
「物心つく前に連れていかれて、何年も経って感動の再会」
「…いいじゃないですか」
全然よくはないけど、ほんの少しでも救いがある気がした。
まるで聞こえていないかのように、料理長は続ける。
「夜見ちゃんは父親になる前に、老化停止の施術を受けてた」
脳裏に、胸を絞られるような情景が浮かぶ。
「自分よりも成長した、息子の姿…それが一つ」
「一つ?」
ドクン。
胸が早鐘を打ち始め、続けられる言葉を無意識の内に拒もうと、目が逸れた。
「もう一つは、凱史が夜見ちゃんに会って、最初に言った言葉」
「…」
もう、聞きたくなかった。
「次の手術は何時ですか…って、訊いたらしいよ。
しかもその時に凱史に同伴してた医者が夜見ちゃんに色々言ったらしくてね、凱史が手術で麻酔を使われなかったこととか、色々」
「…麻酔を、使わなかった?」
「そう。痛覚を全遮断する実験だったから、比較が必要だったんだ。
薬によって遮断される前と、後で、痛みに対してどういう反応をするか」
「っ…ま、だ、子供だったんでしょ!?」
「だからだよ。痛みに対して耐性の弱い子供だから、よりはっきりしたデータが取れる。
グループのトップで、しかも実の父親の父親から許可が出れば、もう止めるのは倫理観だけ。夜見ちゃんはそれで、壊れた」
「そんな…でも…」
「うん。分かるよ、色々と整理できないんだよね、大丈夫」「嘘だから」
欝々とした陰りの中に感情が沈み込んで行こうとしたその瞬間、予想だにしていなかった声が聞こえ、ほとんど反射的にそちらに振り返った。
「だ、代表っ、と、夜見様!」
「さっきぶりだね、ご飯ありがと。あ、あとその代表っていうの止めて」
「あっ、はい、すい」「うぅん、煩い。声おっきい」
「こーら、ご飯持って来てくれたんだからそんなこと言わないの」
だいひょ…三神様は厨房の中へと足を踏み込んで、その後ろから付いて来た夜見様が着物の中に手を入れた。
「夜見…まぁいっか」
「ここでおっぱじめないでよ?」
「煩いよ、悪趣味なペテン師の癖して」
「ペテン…あ、嘘、嘘ってどういうことですかっ?」
危うく忘れるところだった疑問を思い出して、そのまま三神様にぶつけた。
「さっきの話…じゃあ久しぶりに昔話でもしようか。ペテン師、何か摘まめる物」
「えー、俺も聞きたーい」
「あぁ、そう」
「…分かったよ。はいはい、簡単なので勘弁してね」
感情の無い目で見つめられた料理長が、一瞬表情を引き攣らせていたのが分かった。
「さて、どこから話そうか。夜見の話からでも良い?」
「僕のお話?」
夜見様がまさぐっている場所の動きが激しくなってきたが、三神様は顔色一つ変えない。
「そう、夜見のお話。
さっきの話では夜見が僕の父親って話になってたけど、あれは嘘。夜見は僕が選んだ」
「選んだ…って言うのは、どういうことですか?」
「僕がここの代表になる時奴隷が欲しくてね。それで選んだのが夜見」
「僕、奴隷なの?」
「夜見は夜見だよ。僕だけの夜見」
「そっか。ん、ふふ、ね、入れて良い?」
「駄目。
あぁ、何で僕が夜見を選んだのか聞きたい?」
駄目と言われていた筈なのに、夜見様は明らかに三神様の着物の裾をたくし上げて、自身の着物の袂を大きく広げ始めた。
「あ、ぁの、それは訊きたいですけど、それより、その」
「あぁごめんね、我慢できなくなっちゃったみたい。気にしないで」
その言葉が聞こえたのか、気持ちこそこそといたずらっ子の様に動いていた夜見様の動きが大胆になって、クチュクチュと言う音が響き始める。
「っと、だから止めろって…はぁ」
軽食作りから戻って来た料理長が、クリームチーズに生ハムを巻いただけの簡単な一皿をその辺に置いて、大きくため息を吐いた。
「半蔵さんよぉ、止めてくれよぉ」
「え?あ、ぁの、いや僕は、ぇと」
「半蔵君に止めれる訳なっ、ぃ、ん、はぁ、無いよ。富樫だって無理でしょ」
「はぁ、カイ、カイ、きもち、ぃ、はぁ、中、まだ柔らかいね、ん、はぁ」
いきなり入れられたらしく、三神様の声が一瞬詰まった。
「…はぁぁぁぁ、何の罰ゲームだよこれ」
「嘘付いた、おまぇ、ん、が、悪い」
「あー…はいはい解りました。ったく。で?どこまで聞いたの?」
現状の非現実な光景から目を逸らして、一目散に記憶を辿りに逃げた。
「ぇ、えと、三神様が、夜見様を選んだ理由、ですか?」
「あぁそれ。まぁ現状とおんなじかな」
「…はい?」
「要は、試したわけ。そのいわゆる奴隷候補諸君を。
で、その試し方って言うのが、凱史と一晩一緒の部屋で寝て、どういう反応をするかを凱史が直接見定めて決めるっていう方法だった」
「何だか妙な感覚ですけど、それって…危ないんじゃ?」
「何が?」
「え?だ、だって、二人っきりになるんですよね?その、知らない人と」
知らない人って言う表現は言った直後になんだか幼稚な言い回しだなと思ったけど、意外にも違う所で笑われた。
「そっか、そういう心配しちゃうよね普通。あははっ。あー面白。
えーっと、その何だろ、さっき嘘付いたのはほんとだけど、手術云々の部分だけは本当なんだよね。
んでそん時に凱史も夜見ちゃんも肉体改造的な事してるから、うちの組合員全員殺しても多分息も上がんないと思うよ」
「あ、あぁ、そう、なんですか」
ここに来て何回目か分からないが、とにかく許容範囲を超えた。
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