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「あぁ~んっ、おさかなさん…うえにいっちゃったぁ~」
「ほんとらぁ~、いったった~っ」
まだ小さな子供達の背丈では、水槽の中の魚は良く見えないようで
さっきから僕の息子の平太と流大が大騒ぎしていた。
「あっ、こらっ…。そんなに水槽に手をついてっ…」
ガラスにペッタリと両手と顔をすり寄せて、食い入るように見ているが
あの状態では、ガラスに子供の手垢や汚れがベタっと付いているに違いない。
これ以上の迷惑はかけられないと、子供達の元へ駆け寄ろうとしたら。
大丈夫ですよ…と、マスターに止められた。
「せっかく楽しんでいるんですから…、このまま…」
ねっ…と微笑まれて、あまりの笑みの綺麗さに思わず言葉が詰まってしまった。
この人…一人でお店をやっているんだろうか?
この容姿でカウンターに一人で立つには危険なんでは?
この向けられる笑顔に虜にならない人は、きっといないだろう。
男の僕でも、そう思ってしまうんだから。
「ねぇ~ったからぁ~っ。みえないよぉ~?」
平太の声で、はっとマスターから視線を外すと。
そこには、うちの子が友人の子の宝くんの傍でピョンピョンと跳ねているのが見えた。
「へい…、こっちにおいでよ…」
両手を広げて、何をするのかと思ったら…宝くんが平太を抱っこをして持ち上げていた。
「ふふふっ…、だっこぉ~!」
・・・っ!!!?
なにっ?抱っこだぁ~?
「へい…、みえる?」
「うんっっ!みえる~~っ!」
いくら僕の平ちゃんより少し背が大きいったって、宝くんだって同じ幼稚園児だ。
持ち上げたって言ったって、微々たるもんだろう?
そんなんで水槽の上の方にいる魚が見えるわけないじゃないかっ。
「あぁ~~~っ!じゅるゅぃ~~~っっ!!
りゅ~もっ、だっこぉ~~~っ」
抱き合う二人に、ズルイと下の子が駆け寄っていく。
「りゅう…じゅんばん、ね?もうちょっと、まって?」
「や~~っ!りゅ~~もっ!!」
平太を抱き上げながら、背中にしがみ付いてくる流大を宥める宝くん。
「流大?パパが抱っこしてあげるよ~?」
「やっっ!にぃ~にぃがい~のっっ」
思わず声をかけてしまったが、あっさりと子供に断られてしまった。
どう考えたって、父親の僕が抱き上げた方が良く見えるのに決まってるのに…。
ショックでボー然としていると、後ろのカウンターの中からクスクスと笑う声が聞こえる。
「…仲が、宜しいんですね?…お子様たち…」
「いや…良いというか…なんと言うか…」
普段、仕事で子供達の起きている時に帰れた試しがなかったから。
あまり接していない罪悪感と、子供達の想像以上の行動力に驚いてばかりで。
今日の僕は…本当に、役に立たない父親だ…。
グラスに注いでくれたウーロン茶を飲みながら、マスターと少し話をしていると。
「あっ!りゅう、ダメっ!!
そこには、のってはダメだよっっ!!」
今までに聞いた事のない、宝くんの大きな声が店内に響き渡った。
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