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「今日は、都合が悪くてね…」
カウンター越しに俺の方を眺める若い彼の視線に答える。
本当は、大志をここに連れてくるのは躊躇していた。
青柳と俺は、まぁ…いわゆる同類と言うわけで。
妻一筋に愛している大志の事を、少なからず対象に見ることが出来てしまう。
自分にも妻も子供もいて、大切な存在だとは思っている。
妻の実沙には有り難いことに理解してもらえているのが救いだ。
女性で愛することが出来るのは、もう妻しかあり得ない。
子供の宝には、正直…知られたくはないが…。
そんな自分の性癖を知られるのが怖くて。
同じ思いや考えの持ち主が集うこの店に、大志を誘えないでいた。
「…元気に、してますか?あの…?」
元気に…?
ここで彼が気にするのは、きっと子供たちのことだろう。
「…元気にしているよ。この間は、世話になったね。ありがとう…」
ううん、と首を横に振って。
それでも、子供たちが元気と聞いても浮かない顔をしている彼が気になる。
「…皐月くんに遊んでもらったって、また会いたいって言っているんだよ」
子供たちが目の前の彼に会いたいと話しているのは、本当のことだ。
休みになるたびに、いつ会わせてくれるのかとせがまれている。
ただ…。
この目の前の状況では、素直に連れてくることは出来ない。
オーナーの香島さんやマスターが彼の事を『皐月』と呼ぶのだから
きっと、名前は間違いなく皐月くんなのだろう。
でも…。
あの冬に出会った小さな彼と、いま目の前にいる彼とでは違いすぎる。
たった数か月で、ここまで大きく成長するなんて事が、あってはならないのだ。
「そう…」
俺の言葉で、一瞬嬉しそうな表情を見せたが。
またすぐに、顔色を暗くさせる。
聞いてもいいのだろうか。
目の前で起こっている、摩訶不思議な現象について…。
「皐月…、着替えておいで。そうしたら、いっしょに飲もう」
「…悠さん、は…?」
不安なのか、香島さんの言葉にも動かずにいる。
「オーナー?一緒に着替えていらしたら、どうです?」
その方がゆっくり飲めるでしょ?と、マスターが微笑むと。
「…そうだな。それでは…ちょっと失礼して…」
俺と青柳の方に軽く会釈をすると、皐月くんを連れて店を出て行った。
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