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Encounter_2
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そのまま路地を抜ければ、俺のマンションはすぐそこだ。
タイミング良く住民の人が鍵を開けてくれて、一緒にエレベーターを待つ。
「あら、その猫ちゃん…」
鍵を開けてくれた優しそうなお婆さんは、俺の腕の中の猫を見て目を丸くした。
勿論マンションは別にマナーを守ってのペットを飼うことなら許されてる。驚いているのは、多分周りの布に血が滲んできていたからだろう。
「そういう時は、温めた濡れタオルで軽く体を拭いてあげなさい。湯船に入れちゃダメよ?沁みるからね。
それから消毒して――」
「す、すいません、メモとっても良いですか?」
やけに詳しいお婆さんの、怪我を消毒するまでの手順をしっかりとメモにとる。
少しの時間で怪我の事は勿論、子猫向けのご飯やオススメの動物病院まで教えて貰った。
「ありがとうございます、助かりました。今度お礼を…」
「あらあら、良いのよお礼なんて」
うふふとお婆さんは微笑んで、3階で降りていった。
ドアが閉まる直前の「ちゃんと治してあげてね」という言葉に「勿論です」と頷いて、俺も7階でエレベーターから降りた。
1LDKの、男独り暮らしにはもってこいの部屋に着く。引っ越したばかりでまだ誰も呼んだことない部屋の一人目の客が、まさかの捨て猫だなんて。
子猫を綺麗なバスタオルにそっと乗せて、暖房を付けた寝室のベッドに寝かせておく。
俺が代わりにベッドに飛び込みたいくらい疲れていたが、何とか洗面所に向かって、温めたタオルを作りに行く。
洗面器に湯を張って、タオルを熱くなり過ぎないように温めて絞って――なんて作業をしながら、子猫の容姿をふと思い出す。
雪に隠れてたが、目の周りがひどく落ち窪んでいたし、何よりなんであんなに細かい傷が付いていたのか?そんな疑問が、今になってぐるぐると頭をよぎる。
野良猫か、もしくは鴉か……だけど、気になったのは、薄らと毛の隙間から見えた青痣だ。
動物にやられたくらいじゃ、こんな事にはならない筈だ。それじゃ一体どこでこんな傷が…?
そこまで考えて、お湯を溜めていた洗面器からじゃばじゃばとお湯が溢れている事に気付いて慌てて蛇口を捻る。
危ない危ない、無駄遣いする所だった。
お湯を零さないよう慎重に運びながら、寝室へと向かう。
もうそろそろ起きる頃かな…なんて思いながら、ドアを開けた。
「……は……?」
目を、疑った。
ベッドの上に丸くなっているのは、弱りきった灰色の猫…
――ではなく、傷だらけの少年が、下に敷いていたバスタオルを頭から被って丸くなっていた。
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