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Encounter_3
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「………!?」
声にならない叫び声が出て、思わず手元の洗面器を落としそうになる。
危ない危ない、まだ新品の部屋を水浸しにする所だった。
…いや、そんな事よりも……この男の子は、一体誰だ?
持っていた洗面器をベッドサイドの小机に置いて、恐る恐る寝ているらしい男の子の顔を覗き込む。
白い陶器の様な肌に、長い睫毛、すっと通った鼻、薄い唇…そんな、人間離れした美しい顔の造形。人形と見間違う程のその顔に、数秒ほど見とれてしまう。
だが、すぐに――その美しい顔に、殴られた様な痕や血の跡、目元の酷い隈がある事に気づく。
中学生くらいの見た目には似つかわしくない、痛々しい痕だ。
しかも男の子は酷く辛そうに眉を顰めていて、それに心なしか顔も赤い。どうやら風邪をひいているらしい。
得体が知れないからと言って、怪我している病人を追い出すほど鬼畜じゃない。
この子は誰かはとにかく置いておいて、まずは身体を拭いてやらねば。
洗面器に掛けておいたタオルを手に取り、少年の身体を起こし、頭から被っているバスタオルを取ろうとした、――その時だった。
「……え……!?」
またもや、自分の目を疑った。
少年の灰色の髪の毛の頭から、ぴょこ、と2つの、猫の耳の様な物が生えてたからだ。
思わず、後ずさる。
これは――本物なんだろうか……?
この少年は、人間じゃないのか?
…だめだ、何が起こってんのか分からなくて、考えが纏まらない。
少年の猫耳は、俺の思わず飛び出た悲鳴に近い声にぴくっと反応する。
少年は少し身じろぐと、薄らと、その切れ長な目を開いた。
「………」
海の様に深いブルーの瞳が、まだ動けない俺をゆっくりと捉える。
目が、離せない。
熱のせいで涙ぐんでいるのか、星が散らばったような綺麗な瞳だった。そんな瞳が、俺の視線を掴んで離さない。
……だけど、見つめあったのはほんの刹那だった。
少年の瞳は突然酷く怯えたように歪んで、俺を鋭く睨みつけた。それから、バスタオルに包まったまま、ベッドの端まで後ずさられてしまう。
「おい…!」
「……っ!」
混乱してるのか、手を伸ばそうとする俺の手を蹴ったり引っ掻いたり、とにかく暴れ続けた。
ふーっと喉を鳴らし、瞳孔を猫のように真ん丸に開かせて?威嚇するような声を上げる少年。その身体に纏うバスタオルは、少年が暴れるせいで拡がっていく傷の血が滲み出していた。
まずい、このままだともっと傷が広がってしまう。
「おい!落ち着け!」
焦ってしまい、思わず大声で怒鳴り付ける。
すると少年はびく、と身体を震わせて、抵抗するのをぱたりと止めた。…正しくは、恐怖で身を竦ませて動けなくなった、といった風だが。
「あ、…その、怒鳴ってごめんな。これ以上暴れると傷口拡がるぞ」
こういう風に怯えてる子供に怒鳴るのは逆効果だ。しまった、と思いながら、出来るだけ優しく声をかけた。
少年は、俯いたまま、何も言わない。
ただ手が白くなるくらい強くバスタオルを握り締めていて、俺はその手に自分の手をそっと重ねてから、また聞いた。
「傷口、拭かせてくれないか?」
少年はまだ、俯いたまま。
そのままバスタオルを掴む手をそっと退かす。
少年は一瞬身体を竦ませたが、抵抗はしなかった。
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