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Encounter_7
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かちゃかちゃと、静かな部屋に皿のぶつかる音だけが聞こえる。
さっきの人…たつみさんが、俺の食べた分まで皿を洗ってくれてる。
「手伝う」と言っても首を振られてしまって、俺はただ何もせずソファで座っている事しか出来なかった。
たつみさんはどうして…俺を助けてくれるんだろう。
この姿を驚かなかったのも、…俺を見て変にならないのも、外に出てからはたつみさんが初めてだ。
傷だらけなのも何も言わずに、薬まで塗ってくれた。
名前の無い俺に、綺麗な名前を付けてくれた。
こんな奴を何も出来ない奴を何で置いてくれるのか、ほんとうに俺はここに居ても良いのかな…?
「……あ、」
そう言えば…
俺はたつみさんが持ってきてくれたらしい、ソファに掛けてあるボロ布を手に取る。
その布を少し漁ると、ポッケからくしゃくしゃになった紙が数枚落ちてくる。
これがあれば、皆ニコニコしてくれた。きっと外の人には大切な物なんだと思う。
ひょこひょこと足を引きずりながら皿洗いを丁度終わらせたたつみさんに近づく。
「?どうした、足痛いなら座ってな」
優しい顔を向けてくれるたつみさんの顔を真っ直ぐ見れなくて、俺は足元を見つめながらさっきの紙をずい、と差し出した。
「これ…足りるか、分かんない、けど…」
何も言わないたつみさんに、怖くなって言葉がぶつ切りになってしまう。これがあれば、大人の人達は態度をころっと変えて俺に優しくしてくれる。――紙が無くなるまでは。
足りなくなったら、また貰えばいい。
「俺にとって出来ることはそれだけ」なんだから。
「……お前、これどうやって手に入れた?」
突然先程までとは打って変わった冷たい声を投げつけられて、俺は身体を強ばらせた。
恐る恐る顔を上げると、たつみさんは怖い顔でこっちを睨んでいる。
ひゅ、と喉が鳴る。あぁ、また何かしてしまったのかな。
俺がバカなせいで――優しいたつみさんを怒らせてしまっている。
「……っ、これ、は、お礼だからって、
知らない…おじさん、に……」
正直に答えると、たつみさんはまたぎゅっと眉を寄せた。
「…手首、見せてみろ」
ぐい、と手首を引っ張られ、手首に色濃く残る縛られた痕を見られてしまう。
まだ真新しい傷がつきんと痛んで、俺は眉を顰めてしまう。
そんな俺を見たたつみさんはわなわなと唇を震わせた。
「まさか…っお前、身体売ってんのか!?」
身体を売る…?どういう、こと?それは悪い事なのか…?
違う、だって俺、悪い事なんてしてない。
俺は「違う」とたつみさんに伝えて、恐怖に押し潰されそうなのを必死に耐えて口を開いた。
「これが、俺が唯一出来る事、だから……
キモチいいことして、痛いのも我慢すれば、皆…喜んでくれた…っ!この紙だって、いっぱいくれたんだ…
それに、お前は、これしか出来ないんだからって、…」
途切れ途切れにも何とかそう伝えると、突然、頬に熱い衝撃を感じた。
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