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Encounter_8
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「な、にす…っ」
久しぶりの激しい衝撃に、ぺたんと床に座り込んでしまう。
直ぐ、平手打ちされたのだと気づいて。
呆然とたつみさんを見上げると、そのままふわりと暖かいものに包まれて、俺はハッと息を呑んだ。
「ばかっ、そんな事言うんじゃねぇ!
お前はそんな事しか出来ない奴なんかじゃないんだよ…!」
たつみさんが、強く俺を抱き締めながらそう強く言い放った。
うまく泣けない俺の代わりに泣いてくれてるみたいで、たつみさんが頭を乗せた肩が段々濡れていく。
…どうして?
俺の為に、泣いてくれるの?
皆そんな事言ってくれなかった。ただ、俺が苦しむのを楽しんでただけだった。
キモチいいことも痛いのも我慢してれば褒めてもらえた。
だから、何も思わない事にしたのに。
施設の外で会った人達も「身体で払え」って。「お前にはそれしか無いから」って言ったんだ。
でも、あの人と同じように、たつみさんも「そんな事ない」って言ってくれる。
きっと俺を安心させる為の嘘なんだろうけど、もう何でも良かった。その暖かさに安心して、ぷつんと糸が切れたみたいにとめどなく涙が溢れてくる。
「……ごめ、なさぁぁ…っ」
声を出して泣けたのは何時ぶりだろう。
もう涙なんて枯れ果てたと思ってたのに、ここに来てだいぶ涙もろくなったらしい。
「謝んなくていい…!」
たつみさんがまた力を入れて、強く抱き締めてくれる。
俺もたつみさんの背に恐る恐る腕を回して、ぎゅっと抱き返した。少し苦しかったけど、それ以上にじわじわと心が暖かくなって…こんな感情は久しぶりだ。
どんだけ時間が経ったんだろう。
とんとんと肩を叩かれて、沈みかけてた意識がふっと戻る。泣いたままたつみさんの肩でうとうとしてたらしい。
「大丈夫か?」
「は、い…ごめんなさ…」
「謝んなくていいって。ほら、行くぞ」
優しい顔で覗き込んでくれるたつみさんの顔が見れなくてぱっと顔を伏せると、突然ふわりと身体が宙に浮いた。
「わっ…!?」
「軽いな…」
片手でひょいと持ち上げられてしまって、ぐらりと身体が揺れる。必死にたつみさんの首に腕を回すと、たつみさんは軽い軽いと笑ってくれた。
「お、降ろしてっ」
ばたばたと足を動かしてみるけど、たつみさんは痛くも痒くもないみたい。そのまま俺が居た寝室に連れてかれると、軽々とベッドに投げられてしまった。
そのままふわ、って上から毛布を掛けてくれる。
外に居た時には考えられなかった暖かさに、直ぐにでも、きっと、寝られる気がした。
いつまで此処に居られるか、分からないけど。
今だけは――今だけは、何も考えたくない。
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